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第189回NMS研究会報告(2013年11月)

(3012号/2014年6月1日掲載)

ヱスケー石鹸(株) 秋元美由紀

 第189回NMS研究会は、2013年11月2日に品質工学会会議室で、参加者14名で開催した。討論テーマ「私のエコシステム」について研究会内討論会をおこなった。
 主宰の矢野宏より、投稿予定論文「私のエコシステム」の感想を募っている。自身がマネジメントされているときは徹底的に討論と議論により上手に仕事をさせられた、思えばこれがエコシステムだった。主宰から研究発表の連名の意味について問いかけられた。セイコーエプソンの畠山は、品質工学発表大会で代理発表したことに触れ、連名者ではなかったが急遽代理発表が可能だったこれこそがエコシステムであると述べた。日頃から議論していたため可能だった。仕事を進めるには共通の価値観と共通の言語が必要。部門間の利益のすり合わせに品質工学の共通言語として損失関数が、一番説明がつくと述べた。
 アルプス電気の宇井は、社内で品質工学を推進する立場だが、陰のネットワークを活かし、異質な人たちが議論するNMSのような集団を目指している、これが私のエコシステムとして機能していると述べた。
 花王の坂本は、2010年研究会内討論会の、品質工学の取り組みを継続するには、という自身の発表を振り返り、品質工学の継続に影響を与える項目をMTシステムで検討した。影響の大きかった項目は研究設備の使いやすさであった。リソースの確保、研究所長の興味、活用場面がどうつながると良いのかを見つけるのがテーマだと述べた。
 コマツの細井は、田口玄一の凄さは能書きではなく実践だったことと正論であると述べ、安く早く解決するための良いアイディアを創出すること。品質工学を学ぶには入門書や解説書だけではダメで、翻訳はありがたい。社会的自由の総和の拡大、社会損失を低減し全体最適をめざすことを意識して社内で実践したことを紹介した。鋳造学会で発表した、中子のガス欠陥の改善事例を取り上げ、標準SN比(動特性)による評価で液温が有効因子あることが経験的な事実に相反しないことから現場に良い反響があったことを紹介した。
 日精樹脂工業の常田は、自身のエコシステムとして、品質工学会の10周年記念討論会がきっかけで自分自身のイノベーションが始まり、エコシステムによる利益を「納得」と置き換えて考えている。会社のエコシステムについては、キーマンありきで指導会の消滅や、担当者の変更等により品質工学が続かなかったため、リスタートを目指す。まずい設計を持ち込まれたとき品証部門としてはどうしているか?という問いに対し、まずい設計はぶれずに突き返していることを紹介。ただし、納期があるのも現実なので代替プランを準備し対策もする。
 キヤノンの吉原は、自身のエコシステムとして、実際のテーマに対して取り組んでいたことを紹介。品質工学はとても優れたものなのでみんなが使うに違いないと思っていたが、社内のエコシステムの構築に至れず継続できなかった、社内エコシステム構築のリベンジを目指す。主宰から品質工学は技術のイノベーションで、その推進者には高い能力が求められるとの指摘があった。
 コニカミノルタの田村は、組織内で定着するための方策が世の中に品質工学を定着させるヒントになるだろうと考え、社会のエコシステムを考える以前に社内のシステムを考えた。コニカミノルタにおける品質工学エコシステムを整理。開発、品証、生産の各部門に品質工学を理解し実務活用に取り組む技術者がいて、最小限のエコシステムは保持しているが、異動や退職によるシステムの綻びの手当に追われている。今後は、品質工学を本当に理解し正しく伝え、途切れさせないことを最優先とする。伝える側にはスキルが求められ、結局のところ品質工学普及のリスクは自分自身にあると述べた。

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