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甲斐 鐵太郎       

四国犬メス「ハナ」の物語(1)

 日本犬のうち四国犬に分類される「ハナ」というゴマ毛のメス犬は初対面の辻嶺子さんがヨシヨシとのど元をなでる耳を後ろに引いて背を低め尾を振ってよろこぶ。目も細めているのである。

 「ハナ」は山梨県石和市で生後2歳半まで飼われていて昨日私のところにやってきたのです。飼い主の藤さんが腰を痛めて世話ができなくなったからだ。私のところにやって来て2日目に辻嶺子さんに対面した。辻さんは紀州犬をずっと飼ってきていて犬の世話には慣れている。中型日本犬はその犬の性格を余程知っていなくては触ってはならないのである。辻さんはハナののど元をなでてやるという不用心とも思われる行動にでた。もちろん危険な犬であれば私が人前に出して触らせるようなことをしないことを知ってのことである。ハナは辻さんの親愛の情に嬉しいと仕草で返した。ハナは性格が良い犬である。勇猛心などどこにもない人なつっこい犬で人に歯を向けることはない。また他所の犬に対しても同様である。

 石和市でハナは10頭ほどの柴犬と一緒に飼われていた。ハナはこれまで2度のお産をしている。私はハナを幼少のころから知っていて、子供が生まれたらメス犬を譲り受けることになっていた。前の飼い主が私との約束を忘れていたための2度の出産があったにもかかわらずハナの子供は私のところには来なかった。山梨に出向いたおりに藤さんに偶然にあったら、ハナを飼ってくれないかというのである。ハナの子供が欲しかったのだから私はハナという犬がその子犬よりも欲しいというのが本音であった。

 私がハナを迎え入れるといっても手を空かしていてのことではない。ちょっと手が空くとこれを持って行って欲しいということで埼玉県の吉見近役さんのところから紀州犬のメス犬をあずかったばかりであった。この犬は埼玉県の入間孝多さんが飼っても良いと言っているので、そちらに行くことになっていたのであった。

 そのようなことで四国犬のメスの赤ゴマのハナが私のところで暮らすことになったのである。私は日本犬愛好家で紀州犬と柴犬を飼っている私は飼い犬は4頭までと決めているので、新しい犬が入ってくると対応してどの犬かが出ていかなくてはならない。だから簡単に飼い犬を新しく迎え入れることはできないのである。犬は可愛いけれどその世話のことを考えると多くを飼うことはできない。

 いつもそのように考えていても突発事故があるもので、知り合いが脳梗塞で倒れたために紀州犬のオス1頭、メス2頭を引き受けることになったこともある。いきなり3頭では本当には閉口する。なんやかんやしているうちにオス1頭とメス1頭は飼い主が見つかってそちらに行き、いまではメス1頭が私のところにいる。

 ハナは私が初めて飼う四国犬である。私は紀州犬の有色犬のメスをこれまで3頭世話してきた。紀州犬も戦前は7割以上が有色犬であった。戦後に生き残った紀州犬のうち猟性能や姿が優秀なだったものがたまたま白毛であったことから現在では紀州犬は白毛のものがほとんどである。有色紀州犬は20%ほどという言い方もあるが私の見立てでは5%ほどである。10%にはとてもとどいていない。

 四国犬はすべてが有色犬である。何かの要因で白毛の四国犬が生まれることがあるかも知れないが私は見たことがない。四国犬には柴犬と同様に赤、赤ゴマ、黒ゴマ、黒などがあり、赤ゴマ、黒ゴマを総評しゴマということもある。時に白や斑が生まれることがあるかも知れない。

 私のハナはこのうちの赤ゴマの四国犬である。黒ゴマの四国犬は精悍に見える。赤ゴマはそれほどでもなく、綺麗さといっても日本犬を知っていて好きな人でなければ綺麗だとは思わないだろう。黒は数が少ない。赤とはゴマ毛の混じらない赤一枚のものである。赤ゴマと黒ゴマにはその中間があってどちらによっているかで、人によって好きずきがある。

 ハナは黒ゴマの方には寄っていない。赤の方にも寄っていない。紛れもなく赤ゴマであるがこれとて赤にも寄っていない。黒ゴマの精悍さがないから優しくは見える。四国犬の目は紀州犬に比べると目尻が切り上がっている。ハナは四国犬の目形をしているが、切り上がり方が少し穏やかであり、目は比較的大きく、全体としてはアーモンド型である。虹彩といって黒目の周りはほどほどに黒いから、求められる目の色を満足している。背丈は49センチメートルあり、これは中型日本犬の四国犬の標準体高にある。背丈の49センチメートルというのは標準であるけれどもこれに達しない犬が多いというのが現実である。

 四国犬メス犬のハナは向こう気などほとんどない犬である。気が弱いのではないかと思われるほどである。背丈に対応した胴の長さは適正であり、背丈を100とすると110以上の比率である。背中は真っ直ぐに伸びており、首も適度な角度で上方に伸び、そこに比較的大きな頭が付いている。前肢、後肢とも求められる要素を満足している。ハナの体型の圧巻は前胴が深く下がっていて腰部が細くくびれていることである。小型日本犬の柴犬ではなかなか出現しない姿であり、四国犬の特徴の一つでもある。

 辻嶺子さんの愛情表現に全身をくねらせてよろこんだハナである。私の見立てではハナは人にもっと可愛がって貰いたいということで、愛情に飢えている。ハナの腰の一部と臀部の毛が歯でむしられてそげ落ちているのは心の痛みの表現であると考えるのである。ハナの気の弱さというか心細さは、人の顔を見たり何かがあるとクンクン・キャンキャンという小さな声を発し続けることによって表現されていると思われる。ハナには人の愛情をウンと注いでやらなくてはならない。

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