vol.20 盗み食い解禁の日!?──月見とお月見どろぼう


 
 つい最近、皆既月食がありましたね。
 この日はあいにく東京では曇り。空を見上げても、お月様の姿を拝むことはできませんでした。
 さて、9月といえばお月見です。よく中秋の名月といいますが、旧暦では8月15日のこと。陰暦では7、8、9月が秋とされ、8月は真ん中にあたるので「中秋」と呼ばれたのです。
 十五夜の風習は、奈良・平安時代の歌集や物語などにも、朝廷での月見の様子を伺わせる記述があります。庶民の間では、月の神に収穫物をお供えする収穫祭として発展しました。
 お月見にお供えするものは、地域によって微妙に差があるようですが、代表的なところでお団子、ススキ、里芋、御神酒といったところでしょうか。もとは秋の収穫の感謝の印としてお供えしたものですから、供え物は収穫されたばかりの芋が多かったようです。そこから「芋名月」の呼び名が生まれました。
 また、かつては旧暦9月13日を「十三夜」として、この日にもお月見をする習慣があったそう。十五夜の月見をして十三夜をしないのは、「片月見」と呼ばれ縁起が悪いとされていたようです。このときの供え物は主に栗や豆だったので、「栗名月」「豆名月」と呼ばれていました。
 お供えするお団子の数には諸説あり、十五夜には15個、十三夜には13個とする説や、毎月訪れる月にちなんで12個  (うるう年のときは13個)という説も。お団子の形にも地域差があり、関東はまんまるですが、関西では里芋を模って先がすぼんでいます。
 ところで、地域によっては、いっぷう変わった「お月見どろぼう」という風習があります。泥棒と言っても、物騒な話ではありません。
 軒先や玄関にあるお供えを子供たちが盗み食いしてまわるというもので、もちろんお供えする側もそれを見込んで多めに、しかも盗みやすいところに置くのです。盗み食いされればされるほど縁起がよいと言われていました。
 現在では、子供たち5・6人で「お月見どろぼうだよ」と近所の玄関を訪れ、家の人からお菓子をもらうという形になっている地域もあるそうで、さしずめ日本版ハロウィンといったところでしょうか。
 今年の中秋の名月(旧暦8月15日)は9月25日です。
 忙しい日常をちょっとだけお休みして、月を眺めながら、昔の風習に思いを馳せるのもいいかもしれません。

  もっと詳しく知りたい方はこちらへ

  お月見を楽しもう!(Club TOSTEM)
  食の歳時記(行事食)9月(全給協)
  お月見のはなし(なにわの科学史のページ)