Vol.12 江戸時代からこの形?──蚊遣りブタの謎


 
 花火にキャンプ、バーベキュー。
 夏は楽しいイベントがいっぱいありますが、屋外での遊びには「蚊」もつきもの。蚊取り線香はレジャーに欠かせないグッズのひとつです。
 ところで「蚊取り線香を入れるアレ」と言って、まず頭に思い浮かぶのはなんですか? ほとんどの方が、口を大きく開けた筒型の「蚊遣りブタ」を連想するのではないでしょうか。
 ぽかんとしたあの顔、夏のなごみ系グッズNO.1だと言っても過言ではない気がします。あれを考えた昔の人にグッドデザイン賞を差し上げたいくらいです。
 ところで、あれを見ていると、ふつふつと素朴な疑問が沸いてきます。
  
  なぜ、犬でも猫でもなくブタの形なのか。
  いったいいつからブタの入れ物が蚊取り線香の入れ物として定着したのか。
 
 実は、意外なことにこのブタさん、江戸時代から存在していたようです。元宿場町、内藤新宿(東京都新宿区)の武家屋敷跡から当時の蚊取り豚が発掘されているのです。
 当時は、枯葉やおがくずなどかさばるものをいぶしていたため、現在のものよりもだいぶ大きいものでした。また、現在では広くあいている鼻の部分が、ビンの口のように細くなっています。
 そう、ちょうど徳利を横にしたような形なのです。
 一升瓶や徳利の底を抜いて横にし、煙をいぶすのに利用してみたら、形がブタに似ていたからあの形に…という説が有力なようです。
 また、当時の蚊遣りが今のように安全ではなかったため、「火伏せの神」として信仰の対象になっていたイノシシの形を模したのだという説や、豚は水神の使いと言われるからだという説もあります。
 さらには、愛知県・常滑の養豚場で蚊取り線香入れとして使っていた土管の進化形との説も。
 シンプルながら、由来には諸説を背負っている蚊遣りブタ。今ではいろいろな形の蚊取り線香入れが出回っていますが、愛嬌のある蚊遣りブタはいつまでも残ってほしいものです。

  もっと詳しく知りたい方はこちらへ

  蚊遣りブタの話(円環伝承)
  豚形蚊遣り(蚊遣り豚)(新宿歴史博物館)
  ブーちゃん相談室(びっくり!!パワーシャベル)
  四日市萬古焼(じばさん三重)