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  since 7/7/2002

 

横田 俊英       

黒柴メス「ミッキーくん」の遊技

横田俊英ホームページ

ネズミと呼んでいる黒柴メスの子犬

 ケージから出された「ネズミ」と名付けられた生後4カ月の黒毛の柴犬は玄関先から一目散に庭に走り出て、ひとしきり庭をくるくると駆け回る。そして庭におかれている紀州犬の犬舎に立ち寄ると体を鉄格子にすりつけてその主に挨拶をするのである。しのあと格子の隙間に顔を突っ込んで犬舎の主である紀州犬オスの武蔵号こと「ムー」に愛想を使う。そうするとムーはネズミの顔を丸ごと軽く加え、そして舌なめずりする。ネズミはまた庭を走り回ってはムーのところに戻ってきて同じ行為を何度か繰り返すのである。家ではネズミと呼んでいるこの黒柴メスの子犬もこれでは人聞きが悪いので外ではミッキーマウスの頭の部分をもらって「ミッキー」と呼ぶことにしている。

柴犬コンちゃんのシッポには毛がない

 庭には柴犬メスの「コンちゃん」の犬舎があり、こちらでも似たようなことをする。コンちゃんは展覧会に出ると優秀な成績を収める姿のいい赤毛のメス。優れた姿態を気に入った友人に懇望されたので、私のところから2年ほどそこで飼われたいた。友人のところには先住者の紀州犬のメスが飼われていて、コンちゃんはその先住者と折り合いが悪く、ストレスのためシッポの毛が抜けてしまっていた。経過をみても改善がないのでコンちゃんは私のところに戻ってきたのである。コンちゃんは毛色があっさりとした赤毛で何となく毛色が黄色みがかって狐色なので、「コンちゃん」と名付けられた。コンちゃんは「コン」とも呼ばれる。「コン」の目形は最高で、性格抜群のコンは引き綱を放して一緒に山歩きができる。メス犬であるから体格面で人を威圧することがない上人なつっこい。こうしたコンちゃんが期待されて連れて行かれた飼う主のところの紀州犬メスと折り合いが悪かったのである。私のところに戻ってから6カ月ほどでそれこそネズミのようなシッポに見事な毛が戻った。

2頭の柴犬はネズミのシッポ

生後4カ月の黒柴メスの「ネズミ」こと「ミッキー」も、コンちゃんと同じようにシッポに毛が生えていない。ネズミのシッポで腰の部分が分厚く、足が短いミッキーは、ぱっとみると柴犬とは思えない。ネズミそのものである。

子犬のシッポに毛がないのはなぜ

 黒毛の柴犬メスもシッポの毛が生えていないのでコンちゃんと同じネズミのしっぽである。3頭まれた子犬のうちオスとメスの黒毛の柴犬のシッポの毛がどうしたわけか抜けてしまい生後4カ月になっても生えてこない。母犬がなめるためこのようになるのか、子犬がなめるのでこのようになるのか原因はわからない。赤毛の姉妹犬は立たせると子犬とは思えない立ち姿を示す。丸く太い口吻はツンと少し上向きに伸びており教科書に書かれているとおりの柴犬らしい見事な顔立をしている。目形もハマグリ型である。この赤毛の姉妹犬は滅多に生まれたこない特上の犬であることが十分に表現されている。この赤毛は体つきが良いためしっかりした立ち姿を見せるのである。これに磨きをかけようと繁殖者の友人は、この子犬が首を持ち上げて立たせるため牛舎の前の広場に針金を渡して、これにヒモを付けて子犬を吊している。
心中は複雑だが笑顔をつくってネズミを抱き上げた
 私はコンちゃんのネズミのシッポと同じ「ミッキー」をみて可愛そうでならなくなったのである。ネズミのシッポであったコンちゃんと黒柴子犬の「ミッキー」が同類に思えてならない。この2頭を一緒に飼ってやろうという思いが脳裏を何度もよぎった。一時の感情で動いてはならない、早まるなという自問をしていた。が、ついに声が出た。「この子犬を連れて行くよ」。言ってしまったあと、屹然としたとしたこの言葉に自分がビックリした。「いいよ」と言葉がすぐに友人から返されていたのである。「しまった」という思いで胸中は複雑であり、撤回の言葉も飛び出そうになった。一度口からの出た言葉は元に戻らない、しかし「武士に二言はない」。心中は複雑だが笑顔をつくってネズミを抱き上げた。そのような事情でミッキーは私のところにやってきた。

柴犬同士の飽きることのない遊技

 「ネズミ」はムーとしばし遊んでから庭に面した和室の横に置かれたコンちゃんの犬舎に移動して今度はこちらでコンちゃんとじゃれあいをする。ネズミとコンちゃんの遊技はムーがするような大胆さはない。ネズミがコンの犬舎の格子に顔を突っ込むとコンはそれに噛む仕草で応じるとネズミはすぐに顔を引っ込める。コンがなめ返すとネズミは喜んでかを出したままにしている。そしてネズミはコンの犬舎を一回りしてはまたちょっかいを出す。コンは格子から手を出してネズミを呼ぶ仕草をするとネズミは体を格子に押しつけて親愛の情を示す。こんなことをコンとネズミは飽きるまで繰り返えすのである。

居室から眺める子犬の遊技

 私は和室で調べ物をしたり、物を書いたりして犬たちの様子を眺めている。ネズミのミッキーはときおりガラス戸を両足でひっかいては私の注意を誘う。この間に餌を食べ、庭で糞とオシッコをしたミッキーはうたた寝をするのである。庭には透明の屋根が付けられており雨の日でもこの遊びをさせる。この庭には冬の間はジョウビタキやってきたシッポを小刻みな独特の調子でふるわせて遊んでいく。ヒヨドリもエサ代のミカンに誘われて常駐している。スズメは餌のおこぼれを犬舎に飛び込んでついばむ大胆さを示す。
 何時だったかツバメが犬舎に飛び込んでムーに捕まえられそうになっていた。

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