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画家フェルメ−ルと計量  NHK「新日曜美術館」6月6日の企画に計量史学会が協力               

 4月中旬にNHK「新日曜美術館」の制作担当者から学会へ質問が寄せられました。十七世紀オランダの計量とくに長さの単位について訊ねたいとのこと。説明によりますと、画家フェルメール(J.Vermeer、1632〜1675)が自作絵画「画家のアトリエ」に描いた仕事場の情景をテレビ・スタデイオで再現する企てがあって、部屋や家具の寸法を確認したいのだが、当時の計量単位の実態を教えて貰いたいとの希望でした。

 そこで、オランダ計量史を研究している会員1)がNHKと連絡を取り詳細を照会した所、時は1660年代、場所はデルフトと条件が限定されましたので、早速、信頼できる文献2)から検索して
  1エル(el)= 0.683 23メートル(m)
と解答し、併せて、同時期の他の都市たとえばアムステルダムの
  1エル(el)=0.687 81メートル(m)
等とは区別すべきことも伝えまして、感謝されました。

 6月6日(日)午前9時の教育テレビ「新日曜美術館」で、どのような扱いがなされるか、視聴をお勧めいたします。

 ご参考までに補足しますと、後の1810年代、オランダはフランスの支配下に置かれ、メートル法をいち早く導入するのですが、
国民が受け入れやすいようにとの配慮から、旧単位名を残して
  1エル(el)=1メートル(m)
という、かなり強引な切り替えをしました。この不自然なエル単位は数年後に廃止され、メートルへの統一が達成されますが、その途上の過渡的なオランダ計量制度が日本にも伝えられ、当時の蘭学者たちを大いに悩ませたのでした。
 −フェルメールは「天秤をもつ女」という絵も残しています。計量に関心を抱いた芸術家の一人だったと言えるでしょう。このたび当学会に刺激を与えてくれたのも偶然とは思えませんね。

 フェルメール作品展は、東京都立美術館および神戸市立博物館で順次に開催されます。
なお、この問い合わせに際し、(社)日本計量振興協会事務局のお手数をわずらわせました。心からお礼を申し述べます。

1)高田:〈あるオランダ文献に見る日本度量衡〉「計量史研究」、
  No.14(1991),.p.27およびNo.15(1992),p.45.
2)W.C.J.Staring:De binnnen- en buitenlandsche Maten…、
  初版1871、改訂増補1902、復刻1980.

フェルメール「画家のアトリエ」
栄光のオランダ・フランドル絵画展

東京都立美術館
2004年4月15日〜7月4日(休室日:毎週月曜日)
開室時間:9時から17時まで開室(入室は16時30分まで)
夜間開室:金曜日は7時まで開室(入室は18時30分まで)
◇関連イベント◇
記念講演会「フェルメールのアトリエ訪問」
講師:小林 頼子(美術史家・目白大学教授)
日時:2004年6月12日(土)午後2時から、場所:東京都美術館講堂
東京都台東区上野公園8ー36、電話:03−3823−6921

神戸市立博物館
7月17日〜10月11日
(休館日:原則として月曜日)
開館時間:午前10時〜午後5時
(入館は午後4時30分まで)(原則)
神戸市中央区京町24
電話:078−391−0035

 

「計量史通信No.53から」

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