since 7/7/2002
2002/11/28
日刊 日本計量新報(日刊 計量計測データバンク)
稚魚放流しないのに?サケ続々そ上 宮城・砂押川
宮城県多賀城市、利府町の中心部を流れる砂押川に数多くのサケがそ上し、地元の話題になっている。砂押川は流域の開発などで水質悪化が問題になっていた河川で、現在、サケの稚魚放流は行われていない。住民たちは「なぜ生まれ故郷でもない川に上ってくるのか」と首をかしげながらも、「かつての清流を取り戻した」と喜んでいる。
サケの姿は、浅瀬が多い利府町内の砂押川で頻繁に目撃されている。体長約50センチのサケが、幅わずか1メートルほどの川を上っている。サケの産卵には川底が砂でなければならないが、砂押川は大半が泥。わずかな砂地を求めて、数匹が競うように上流を目指す光景も見られる。
川の清掃を続けてきた市民団体「砂押会」によると、サケのそ上は10月中旬に始まった。同会が11月17日に観察したところ、利府町内の流域だけで百数十匹が確認できたという。現在も数匹が泳ぐ姿が見られる。
砂押会の木村洋治会長は「これだけの数のそ上は今まで聞いたことがない。各団体の清掃活動が実り、川がきれいになった証拠。とてもうれしい」と話す。ただ、子どもが石を投げるなどのいたずらも確認されており、「子孫を残すため、最後の力を振り絞って川を上る姿を温かく見守ってほしい」と訴えている。
砂押川の撮影を続けてきた多賀城市のアマチュアカメラマン本郷浩さん(59)は「最近は水質が良くなっていると聞いていたが、これだけのサケがそ上するとは…。驚くとともに感激している」と話す。
稚魚放流をしていない砂押川にサケが大量そ上したことについて、サケの生態に詳しい東北大付属海洋生物資源教育研究センターの木島明博教授は「サケが生まれた川に帰る確率は90数%。迷って七北田川などに帰れなかったサケが砂押川に入り、繁殖を続けていることが考えられる。サケは汚れた川には産卵しない。(そ上は)川がきれいになったことを示している」と話している。
砂押川は利府町北西部を水源とし、利府町から多賀城市中心部を抜けて仙台港へと流れ込む全長約15キロの河川。「砂押会」は、サケが産卵できる場所を増やすための整備を行うよう今後、関係機関に働き掛けていく考えだ。