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ツグミ(2)

 冬枯れの  さみしさ埋める  ツグミ鳥   虚心

ツグミ

 この冬、私の生活のなかに入り込んできた野鳥はツグミでした。いつものジョウビタキは遠くにはいるのですが庭に足を運んできません。ツグミがこの冬私のそばにずっと付いていてくれたのです。私の住まいは高尾山麓の端にあり相模湖とはほど近く二軒ある家の先は相模川です。

 ツグミは赤い鳥です。というと正確さを欠きますが印象としては冬の赤い鳥です。ツグミとほぼ同じ大きさのヒヨドリは暗緑色に青が重なったような体色ですが、ツグミはパッと見たとき胸の斑と翼の赤みがかった茶色が印象的です。冬枯れの景色のなかでツグミは私には赤い鳥に見えるのです。ツグミの体長は24cm、翼開長39cmです。

 山々が秋色に色付くころ、ツグミは冬の使者としてシベリアから飛来し、私の住む地には10月末ころの姿を見せます。ツグミは雌雄同色です。羽色は個体差は大きく、胸の斑点の少ないもの、翼の茶色味のないもの、眉斑の濃いもの薄いものなどさまざまです。秋に飛来したときには警戒心が強く人の前に姿を余り見せませんが、木の上に留まっていることが多かったツグミも徐々に地上に降りてきて人の直ぐ前でもキョトンとしたような姿で採餌するようになります。

 食べ物は木の実、果物、虫などです。ケ、ケッという大きな声が地鳴きで、桜の花が咲き終わると日本を離れますが、そのころにはツグミのにぎやかなさえずりの声を聞くことができます。冬の休日に散歩に出ますと、畑地に降りて餌をついばみながらケ、ケッという大きな声を出し、両足を揃えて数歩ピョンピョンと歩いては立ち止まり、胸をそらしては静止するというツグミ独特のポーズを見ることができます。地面をはねるようにとんでエサを取る格好からツグミは古くは鳥馬(ちょうま)と呼ばれました。

 梅の花が盛りを過ぎ、桜前線が北上してくると冬の野鳥と別れなければなりません。重ね合わせて夏鳥がぼつぼつと姿を見せ始めます。春は往く鳥来る鳥の季節です。

 野鳥は地方ごとにさまざまな名前で呼ばれます。ツグミは漢字では「鶫」です。先にそのポーズからツグミが鳥馬(ちょうま)と呼ばれたことを述べました。地方ごとの呼ばれ方を以下に列記します。

 ちようま(秋田、福島、茨城、千葉、神奈川、静岡、伊豆大島、山梨、兵庫、奈良、熊本)。ちようまん(青森、千葉)。ちようまんとり、あかちようまん(青森)。ちよこまん(埼玉)。つぐ(岩手、山形、宮城、福島、栃木、群馬、神奈川、島根、鳥取、香川、宮崎)。つぐめ(山形、新潟、群馬、滋賀、岐阜、長野、広島、熊本)。ゆきちようま(岩手)。ゆきちよま(秋田)。あかつむぎ、みやますずめ(新潟)。あかつく、とらつく、ひよーそー(埼玉)。ねこつく(茨城)。くわつくわ、かつか、つむに(富山)。ほんつぐ、このはかえし(栃木)。せんざいぼー(群馬)。むしくい(千葉)。つむ(神奈川)。のがつちよ、きいきいがつちよ、かち(福岡)。しばかじり、じやし、かつか、こかき(静岡)。つもぎ(石川、富山)。つうめ、つむぎ、つーぬ(長野)。つむぎ(大阪、奈良、兵庫、富山、石川)。はつき(滋賀)。くそつむぎ(大阪)。のつぐ、まつつぐみ、やぶつぐ(鳥取)。なみつぐみ、こくばがえし、しぼほりつぐみ(兵庫)。かち(和歌山)。いづくみ、つむじ(奈良)。ちやじない(山梨)。きーきー、しばさがし、ごみさがし(広島)。かしわ(山形)。しない(愛知)。しばかき(香川)。かしは、かしわつぐみ(高知)。かつちよう(佐賀)。くそつぐ、くわくちゆ(宮崎)。みやまつぐみ、のかつちよう、つぐし、くわつちよ(長崎)。くわくわつちよ、くわつちよ、のがつちよ(熊本)。つくし、つくみ、つみくしろ(鹿児島)。すち、たーとり(奄美)。
 またツグミの仲間にハチジョウツグミがおり、こちらは次のように呼ばれております。みのつうめ、みのつぐみ、かきつぐみ(長野)。とーとうい(沖縄島)。ちやつぐ(栃木)。かきしない、かきつもぎ(石川)。あかつぐみ(埼玉)。

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