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ツグミ

ススキ野を ロケット飛びする 寒ツグミ   虚心

 

 冬はいつから始まるのでしょうか。初霜が降りたときからだと私は思っているのですが、霜など降りない地域もありますから、これは定義にはなりません。ある人は朝起きるのが辛くなったときからだと述べていました。冬になると犬を散歩に連れだすのが辛くなります。ですから寝坊した休日には犬を連れて遠くの野山に出かけてしまいます。その野山に鳥がいたら眺めて過ごすのです。秋が深まるにつれて冬の野鳥を追いかけるのですが、最初に見つかるのはジョウビタキです。ですが、それ以外の冬鳥が見つからなくて困ることが多いのです。

 シベリアなど北の方から渡ってきた冬鳥は、山の高いところにいることが多いからです。カモなどの水鳥は湖水に足を運べば目にすることができます。しかし、水鳥でも渡来の多い年とそうでない年がありますから、一概に言い切れません。

 この冬、家の近くで冬鳥の姿を目にする機会が少なかったのです。それで、ここなら間違いなかろうと出かけたの先が河川敷です。津久井湖下流の相模川、そしてその上流の道志川です。岸辺や中州のススキの原から集団で飛び立つ野鳥のなかにツグミが混じっていました。多く目にするのはホオジロです。ついでスズメ。そしてツグミです。

 ツグミはいつもの冬なら家の裏の林にいるのですが、この冬は姿を見かけません。渡りの多い年は庭に頻繁に姿を見せますし、トイレの窓から覗いているときもあるのです。この冬は山の方でもあまり目にしませんでしたから、きびすをかえして河川敷に出かけたのです。ホオジロやスズメの群れとは別 に大柄なツグミが河川敷のススキのなかから飛び出しました。「なーんだ、ツグミさんこんなところにいたの」です。

 ツグミはヒヨドリと同じくらいの大きさです。尾が短いのとずんぐりしているのがツグミです。体色はヒヨドリは灰色ですがツグミは茶色です。背は茶ですが、腹部の乳白色に黒の斑が散っています。目の上にも乳白色の筋が走っており、喉から頬にかけても同じ乳白色が目立ちます。ツグミは個体によって体色と紋様に違いがありますから、文章による説明や絵や写 真だけでは、見分けられないかも知れません。

 ツグミが飛ぶ姿はロケットを思わせます。づんぐりした体についた三角形の短い翼をせわしなく動かして直線的に飛ぶのです。ホオジロがススキの野原から飛び立つときは尾羽根の白い両端と自在な飛翔に驚かされます。同じ場所から飛び立つツグミはまるでロケットです。ツグミとともに庭にやってくるヒヨドリは、曲芸的な飛翔をします。宙返りなども軽々です。これに対してツグミの飛び方は不器用そのものです。

 ホオジロがススキの野原から飛び立ちますと尾羽根の白い両端がまぶしいですし、身体の扱い方が上手です。ホオジロの独特の身のこなし方が私は好きです。ツグミはロケットのようだと述べました。同じススキの原から飛び出しても、一目でホオジロとツグミの違いは分かります。もちろん身体の大きな方がツグミです。そしてロケット飛びをするのがツグミです。

 ツグミには不幸な過去があります。ツグミは大柄な体躯と肉の美味さから乱獲されたため、数がうんと減ってしまったのです。昔は幾千万という群をなしてツグミはシベリアから渡って来ていたのです。人の行いは浅はかなのです。人を恐れない鳥を捕って、食べ尽くしてしまいました。

 秋が深まると京都の錦市場の店頭にはスズメの串焼きが並びます。2尾串に刺されていて380円です。頭も付いていますし、足もそのままです。肉などむしってもいかほどもないのです。恐らく骨ごとかじるのでしょうが、食べたらどんな味がするのでしょう。京都の伏見稲荷の鳥居の前には同じ鳥を食べさせるお店があります。

 ツグミは愛嬌のある野鳥です。ツグミそのものは冬鳥ですが、クロツグミは夏鳥ですし、トラツグミは留鳥です。ツグミは飛び立つときなどに「クエッ、クエッ」と鳴きます。

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