|計量計測データバンク|野鳥歳時記|

メボソムシクイ

夏至の日に  やさしく歌う  メボソ鳥    虚心


 標高が2000m近くになりますと俄然多くなるのがメボソムシクイ(メボソ)の啼き声です。山を啼き声で埋め尽くしているといっていいかも知れません。メボソは亜高山帯の登山路脇に陣取っていて、どこまで歩いてもずっと啼いて登山者を励ましてくれるのです。メボソはチョリ・チョリ・チョリと啼くということになっていますが、私にはコロ・コロ・コロあるいはフィ・フィ・フィというように聞こえます。虫の啼き声かと勘違いしますがメボソの声です。声はすれども姿は見えずという代表のようなメボソですが、こちらが道中を急がないのであれば十分に観察できます。
 メボソムシクイはヒタキ科の夏鳥です。ウグイスに姿が似ております。腹部の白さと眉の強い白の線引きでメボソであることがわかります。渡ってきた当初は平地にいますが次第に亜高山の針葉樹林に移動し、登山者に山のメロディーを送るのです。動作は一つところに留まるということがなく枝先をつねに移動しています。亜高山帯の山に登ってフィ・フィ・フィ、コロ・コロ・コロ、チョリ・チョリ・チョリというメボソの声を聞きますと、まずは夏がきたなと思います。そしてその啼き声は奥深い山、静かな高い山に足を運んでいることを実感させてくれるのです。夏山の下山路で高度を下げますとヒン・カラ・カラとコマドリが一日の奮闘を讃えてくれるのはうれしいことです。夏に元気なウグイスは標高2900mの八ヶ岳の赤岳にまで勢力を広げホーホケキョとやっておりました。
 夏至のころ、日本は一番いい季節です。山の自然は弱虫やナマケモノにやさしくはありませんが、どのような魔法なのかそこに飛び込んだ者に勇気や知恵をもたらし、生きるよろこびを与えてくれます。

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