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キジバト

畝(うね)起こす野辺で見合いの春の鳩  虚心

キジバト

 3月12日朝、耕運機を入れた畑に10羽ほどの山鳩が群れていました。この日、住まいのある相模湖町では雪がちらつきました。通 勤電車が新宿駅を通過する頃、乗客の「雪だ」と話す少し興奮した声が耳に届きました。
 鶯(うぐいす)の初鳴きは未だです。3月15日に聞いた年もあるのですが今年はどうでしょうか。この冬はよく雪が降りました。家の周囲の日陰には1月末の28センチ(メートル)もの降雪のなごりがあります。山鳩がペアを組むのはもう少し先なのでしょう。これが群れている山鳩の今シーズンの見納めになるのかな。うららかな春の野辺の山鳩の鳴き声に思いがとびます。また、むせ返る緑の山中の山鳩の姿が目に浮かびます。夏が恋しいのです。昨年の夏の暑さをもう忘れて、夏が恋しくなっているのです。
 山鳩はキジバトともいいます。山鳩の鳴き声はどんなでしょうか。日本人の耳には「デデポッポ」と聞こえるのです。幼児には「ポッポッポ(鳩)ポッポ」と聞こえるようです。
 梅の花は今が盛りです。沈丁花もいい匂いを放ち始めました。1週間もすると桜前線のニュースがテレビでかしましくなるでしょう。この時期は冬鳥との別 れの時でもあります。冬鳥は人の近づくのをはやくから知っていて、間近になるとヤブの中に姿を隠します。凍てつく季節を慰めてくれた冬鳥たちに「ありがとう」の言葉を贈りたいのです。もちろん留鳥たちは人里にうんと近寄ってきて十分にいやしてくれていますが、やはり渡りを控えた冬鳥たちに感謝をしたいのです。
 私たちの小さな畑に前日、馬鈴薯を植えました。ポカポカ陽気に妻が浮かれてしまったのです。
 日本野鳥の会が高尾山で探鳥会をしますとドバトが一番に多い鳥としてカウントされます。ハシブトガラスが三位 です。山鳩(キジバト)は十位です。季節によりこの間に様々な野鳥が出入りしますが、ヒヨドリ、メジロ、スズメのほか、カラの仲間が常時名を連ねます。ドバトが山に進出して、山の鳥だったはずの山鳩が里山からさらに都市部に降りてきています。山で探鳥をしてドバトを見なければならないのは、人生が意に反したことばかりであるのと重ね合わせて考えれます。
 日本中にまんえんしたドバト(カワラバト、伝書鳩のこと)は糞害をもたらすので閉口します。山鳩は畑に植えた種子を幾分かほじくるとはいいましても、それに増して小鳥たちは病害虫を駆除してくれますからみな畑の守り神です。山鳩がいる風景はのどかさの証明みたいなものですから、それだけでも十分に役目を果 たしているといえるでしょう。この山鳩も空気銃の規制がなされるまでは種の存亡の危機に瀕したこともあるのです。アメリカでは旅行鳩が狩猟によって絶滅してしまったのです。
 のどかさや山里を象徴するものとして山鳩が日本の歌謡曲に歌い込まれています。山鳩を歌詞に折り込んだヒット曲を探してください。

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