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カワガラス

カワガラス  直っすぐに飛ぶ  渓の夏 虚心

 渓流を棲みかにする野鳥ではカワセミが有名ですが、私はカワガラスが好きです。スズメよりもうんと小さなミソサザイは日本で一番小さな野鳥です。カワガラスはスズメよりずっと大きく、ムクドリに近い大きさです。ミソサザイは渓流の茂みに隠れながら、また尾羽をピョンピョンとせわしく動かして行動しますが、カワガラスはいたって鷹揚で、河原の石から木陰や別 の石に長い距離を直線的に飛行します。飛んでいった先を目で追えば次の行動を続けて観察できます。逃げも隠れもしませんよ、といった雰囲気がいいですね。カワガラスは雄雌同色です。
 カワガラスは越後湯沢の魚野川で、岩魚や山女魚の渓流釣りをしているときに雪の消える前から見ることができるのですが、私が鮎釣りに出かける道志川での記憶が不確かでした。しかし、2001年7月22日の日曜日、神奈川県津久井町の此の間沢キャンプ場前で見ることができました。このキャンプ場の下流には奥相模ダムがあって、そこの崖ではカワセミが営巣しているのです。カワセミとカワガラスが棲む道志川の自然です。
 この道志川の鮎が今年は育ちません。竿をだして10分ほどで1尾捕れましたが、その後が続きませんでした。そういえば何時もは大勢の釣り人がいるのに午前8時を過ぎても広い河原に3人ほどでした。釣れないと釣り人は川に姿を現しません。鮎が釣れないということは、鮎が育っていないということであり、それはいつもの自然に何らかの変化があるということであり、短絡的な三段論法にたった帰結は、釣り人は自然環境のセンサーであるということです。30年来、この釣り場に通 っているという元気な73歳は、鮎がこんなに育たないことはかつて無かった、と言っておりました。この人は山女魚を3尾ほど釣り上げていました。
 カワガラスは川底の石を足でつかんで、地上にいる姿勢のまま川虫をついばみます。山女魚は川虫が石から離れて流下するのを待ち受けて捕食します。川虫が流下する道筋は流れが決めますから、その流れに餌を送り込むと山女魚が釣れるのです。アマゴも同じです。岩魚は少し違います。
 鮎も川虫を食べますが、少し成長して歯がコケを食むのに適したように独特の形状に変化すると、コケと呼ばれている珪藻類を主食にします。川虫もまた珪藻類があって育つのです。自然の連鎖の妙ではありますが、何かの異変で鮎が育たないと私の夏の楽しみは減るのです。
 釣れない鮎釣りに空疎な時間をもてあましていましたら、カワガラスが目の前を過(よぎ)りました。魚野川で見慣れたあの茶褐色のワガラスを道志川で目撃できたのでうれしくなってしまいました。目を川から上げて周りを見ますとそこは素晴らしい景観でした。偏光サングラスを通 しますと木立や山の陰影、そして空の青さと雲の白さが冴えわたります。こんなに綺麗な自然のなかにいたことをカワガラスが教えてくれたのです。  

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