|野鳥歳時記|

ホオジロのさえずりが始まる

ホオジロが さえずりだして 春が来る  虚心

 春はどこからくるのでしょう。
 私の春は富山から東京にもどるときに来たのです。大糸線の南小谷駅で私の春がきました。
 糸魚川から大糸線経由で新宿に向かう途中の乗換駅、南小谷のホームでホオジロのさえずりを聞きました。3月16日のことです。  ホオジロがさえずっていたのです。驚きでした。1月12日に同じことをしたときには冬の厳しさのなかでした。2カ月の経過は姫川の流れを黄濁色に変えていました。白馬岳からの雪解け水が流れ込んでいるのです。
 白馬駅に近づきましたが、こちらは水が青く澄んでいて釣り人が竿を出していました。そうだ、渓流の釣りが解禁になっていたのです。
 列車の窓越しに中央構造線そのものを間近に見ていて、ここを流れる姫川付近で産出する翡翠(ひすい)が青森市の三内丸山遺跡に運ばれていることを思い出しました。渓流釣りや鮎釣りで刺激された師匠と富山市桜木町のクラブで飲んでいて、誰々は縄文系だ、南方系だと議論していたのが下地になっていたのでしょう。
 師匠にそそのかされてジンとウオッカをストレートで3杯も一気飲みしたものですから、すっかり悪酔いしてしまい前後不覚となり、夏には富山と岐阜と山形で鮎釣りをする約束をしてしまったようです。
 糸魚川から南小谷までの大糸線は雪解けがうんとすすんでおり、小鳥たちが列車の音で山に飛び立ちます。小鳥の種類を特定する間はありませんが、大体はわかります。
 南小谷からはスーパーあずさ8号に乗ったのです。青木湖を過ぎて木崎湖の脇を通るときに湖をしっかり眺めておりました。
 岸辺には雪が残っていますが、陽春に温められたおだやかな水面にボートを出してマスを釣っている姿がありました。
 湖面には少しですが水鳥がいます。コガモ、キンクロハジロが見えました。随分と暖かい日です。
 外の景色をずっと眺めている旅でした。後立山連邦は白い雪の山でした。常念岳が神々しく線路について走ります。上空にはトビがのんびりと滑空しています。
 またしても1週間ぶりに家に帰ることになります。鵜などは琵琶湖などからうろうろと関東に移動してきますが、私の住むところはどこなのかおぼろげになってきました。
 この日、東京の桜開花宣言がでました。翌日には後の林でウグイスが啼きました。1週間家を空けていたので初啼きかどうかわかりません。
 うつろな生活だなあと思っております。

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since 7/7/2002