|野鳥歳時記|

アオジ

新緑の 藪に逃げ込む アオジかな   虚心

 桃の花が咲くころには新緑が広がり、日本は5月の連休にはいると初夏の様相をみせます。半袖で日中を過ごせる時間が増える季節は自然そのものが活気に満ちあふれています。
 自然の働きと分離された生活をするようになった人間は、自然のなかに身を投げ出して自然のもつ営みを肌で感じることができなくなっております。ナチュラリストのソローは、自然こそが人間が本来もっている生きる喜びを与えてくれると考えました。新緑の季節になりますとソローの考えがわかるような気がします。
 近くで見るとなかなかの器量よしなのに目立たぬように生きている野鳥がおります。アオジです。黒っぽい頭に濃い緑色の背と黄色い腹部に茶の点々といったいでたちの、ホオジロ科の留鳥です。体長はホオジロより一回り小さくスズメほどですが、スズメよりは細身です。体色はオスがメスより鮮やかで、頭部にその違いが顕著です。新緑の季節になると独特の調子でさえずります。チョピ・チョピ・ピーチョロ・チー・チーといものですが、ある地方ではこのさえずりを「ジジー・ババー・死ね」と聞きなして、老人のいる家庭では飼ってはいけないことにしているといいます。
 私が好きなホオジロは明るい場所を好みますが、アオジはホオジロに比べると暗がりを好み、道ばたの明るいところに出ていても人の姿に気づくと藪陰に逃げ込んでしまいます。
 アオジは、私が散策路にしている山中湖の旭が丘付近に6月になると平地から多数登ってきて、チチッ・チチッとホオジロ科特有の地啼きで埋めてしまいます。繁殖は主に本州の中部以北と北海道で行われているということですが、関東地方でも繁殖が確認されています。神奈川県や山梨県でも少数ですが繁殖します。

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