|野鳥歳時記|

アマツバメ

清冽な 光に溶ける アマツバメ  虚心

 軒先のツバメのヒナが今年は孵(かえ)りました。昨年は巣がヒヨドリに襲われてヒナの姿をみることができませんでしたが、今年は上手くいったようです。
 ツバメもイワツバメも飛ぶのが上手です。しかし、それよりも見事な飛翔をするツバメがいるので見とれてしまいました。6月中旬過ぎに八ヶ岳の赤岳上空を滑空するツバメをみたのです。尾は燕尾服と同じように大きく割れておりますが、喉は白く腰にも赤みはありません。それでいて身体が大きいのです。尾が割れていないのでイワツバメではありません。大きな翼はツバメをはるかに凌ぎます。二回りは大きいのです。体色は茶に近いもので腹部には横に少し白い縞があります。臙脂の青黒い艶やかなものではありません。飛翔はそれはそれは見事なものです。翼をほとんど振らずに、紺碧の清冽な大空を滑空しているのです。峻険な岩峰に舞い降りたその鳥はアマツバメでした。
 夏鳥として渡来するアマツバメは高山で営巣します。私が知っているのは八ヶ岳の赤岳付近だけですが、海岸の岸壁にも営巣し、アジアの東北部に分布するといいます。アマツバメは翼がとても長いので風に乗るのに都合がいのでしょうか。天高く舞い、滑空する姿に創造主の芸術心を感じます。
 八ヶ岳山麓は野鳥の「楽園」の一つですが、ここのハイマツ帯には雷鳥はいません。新田次郎が八ヶ岳で雷鳥を発見したというフィクションの下で小説を書きました。しかし、ここには雷鳥はいないのです。
 岩尾根に動物の毛が混じった黒い糞がしてありました。これでは雷鳥の棲息は難しいでしょう。雷鳥の天敵は鷲・鷹類だとされていますが、私は四つ足獣も含まれていると思います。雷鳥の宝庫である立山の雷鳥沢での生息数は300羽ほどだといいます。ここに観光にきた人に「オコジョをみましたがこの位の大きさのは成獣ですか」と聞かれました。人を恐れない雷鳥が生きてゆく環境はことのほか厳しいものと思います。
 八ヶ岳には雷鳥はいませんがイワツバメがおり、アマツバメが迎えてくれるのです。

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