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日本計量新報 2015年8月9日 (3068号)

企業は人を鍛え事業をつくっていくことで成長発展する

気温が摂氏30度を超え手持ちの温度計が39度に達する状態の東京で、就職活動をする学生がテレビインタビューに「ここまで暑いと今日は会社訪問のために動けない」と述べていた。こうした風景は現代日本を象徴しているらしい。就職活動のある部分を覗き見ることができた。東大、京大、東工大、旧帝大の北大、東北大、名大、阪大、九大の理工系の大学院の修士課程で学ぶ者にはその研究室の卒業生などの縁を通じて大企業、上場企業、有名企業からの誘いが「青田刈り」よろしく、来ているという。この人々は現代日本の風物詩のように描かれる学生の就活とは無縁である。
 早慶上智といわれるようになった3つの大学でも理工系の大学院在学生は同じような状況にあるようだが、これらの大学をでた人であってもすべての人が楽々と大企業に入社して、その後に好きな職種に就いて悠々と職を全うすることは希である。学校でよい成績をあげて良いとされる大学を卒業しても、期待される能力を備えたかということになると別である。ある私立中堅大学の数学科では3割が留年し、多い年は5割に達し、そのようにして卒業してもそのうちの3割が数学の能力に失望して、数学と縁を切る。さまざまな理系の学科においてもそのような事情があることだろう。文系の学科にしても同じだ。大学の学部や学科があってそこで期待される学生像に照らして、それを満足する人の割合は決して多くはない。
 人を雇う側には人を採用する担当者がいて、その担当者はその社会の観念から逸脱した採用方法をしない。入学が難しい大学の順にそこを卒業する人が「優秀」だと決めて採用する。人は三月や半年あるいは1年は化けの皮をかぶっていられる。それを超えるころにはその人のおおよそのことが出現する。数学科を卒業していても数学ができない者などはざらであり、ほかの学科もそうだ。数学、物理、科学、ほか理学や工学にしても、その専門のことに習熟していることとあわせて、総合の視野とか知識そして教養を備えていなくては、その専門知識を生かすことはできない。
 官僚としてそこそこの活躍をした人が入省してきたキャリアの教育研修を担当して驚いたことは、それらの人々があまりにも素直すぎて世間を知らないことであった。この人は東北大の土木工学の出身で局長をした人であった。旧制中学、旧制高校、旧制大学といった学校制度のもとでは学問を通じて世のなかのエリートになれる者は同じ年の生まれの100人に1人もいなかった。大学全入のいまの時代においては同じことが入学が難しい大学として形を変えて続いている。本当の知識や教養なのかは別にして、学校での成績の競争は何時の世のなかにもある。エリートになれなかった学生の真夏の就活が風物詩としてテレビ報道される現代である。
 計量計測機器企業においても新卒学生ほかの採用で人事担当者は大わらわなことであろう。ある企業では格好良い学校を卒業した者を採用して喜んでいたところ、程なくして名のある企業に移った。同じように旧帝大の理系の人を中途採用したところ、早くて三月長くて1年というその間に人としての素行に疑いがあることがわかるとともに職場を害する状態になった。名のある企業を除くと計量計測機器企業が学業が特別に優秀な新卒を採用することは難しい。ではどうするのがよいか。企業は人を鍛え事業をつくっていくことで成長発展する。あたっているかどうは別にして、幕末から明治にかけて活躍した人々は30歳まえに責任を与えられ自立して考えて行動した。

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