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日本計量新報 2013年12月15日 (2992号)

今日しなくても明日には困らないが、やがては困る

面会した人に上司へのご機嫌伺いの伝達をされると、それを伝えることが何より大事になってしまう人がいる。そんなことは本人が直に伝えれば良いことだから取り次ぎなどしなくてよい。要らない小さな約束ごとに拘泥して、自分がなすべき自分と会社と社会との約束ごとを疎かにしても気にならないのが人間のようだ。大事なことをそうでないことを選り分けて行動するのが賢い人である。
 あれをする、これをすると決めていても、その途中に些細(ささい)な用事が舞い込むとそれの始末に追われて、本来やるはずのことをやらないで過ごす人が多い。これが1日や2日ならいい、1週間でもよい、しかしそれが1カ月になり1年になると、その人はあれやこれをする気がないことが判明する。どのような持ち場でもそのようなことが起こる。現代人の仕事は抽象的な約束ごとでできあがっているからだ。自然と向きあう畑仕事であれば、雑草が生えれば除去し、実れば刈り入れする。船を造る大工も、木を刻み、張り合わせて、組み付けないと船にはならない。見ればわかることは、大体は間違いなくやることができる。現代人の仕事は抽象化されている。営業のために得意先ほかにさまざまに案内しなければならない。これは今日しなくても良いけれども一カ月の間にしなければならない。それをしなくてもすぐには何も起きない。それが一年したらどうだろう。とんでもないことが少なからずおこる。
 年度ごとにする大きな催しを責任者が忘れていた。予算請求すれば大きな施設を永久的に無償で借りることができることに決まっていたのに、それを忘れてしまうことがあった。ある期日までに文章の校閲を終える約束になっていたのに、ある期日を遙かに超えてもそれをしない人がいた。文章を校閲するという能力に欠けていたか、文章の決まりごとにこだわりすぎて手が付かなかったのだ。やれていなければ、やれていないと泣き言をいえば周囲は手助けをするか、担当を代えて予定の時期に完成させる。単純な物忘れということがあり、一方では過重な業務負担に対して鬱的状況になる人がいる。そのような業務課題を関係者が共有して、実施の日程を決めて、都度確認するようにすべきであるが、業務を分担すると担当者任せになって相互の確認を怠り、始末の悪いことになる。笑い話のようであるが日常、身の回りで頻発する。
 ヒット商品があって、これがよく売れている。会社は利益がでていて順風満帆である。今日の繁栄は明日の繁栄であるだろうと誰もが思っている。大手電機メーカーは家電ほかで利益がでていて、先々まで安泰だと思っていた。同じ家電をアジア諸国で安くつくり、安く売るようになると、市場での競争に勝てなくなる。その対応として社内業務のコストダウンに走り、人員を整理し、配置転換をして、手を打ったとする経営者が多い。赤字の原因が為替変動である場合には何もしないのに黒字に転換する。このようなことが2013年の日本に起きた。
 電子的なセンサーの信号をデジタルで表示するだけのことであれば、アジア諸国で生産する製品は日本の半値どころか5分の1ほどである。しかし、仕様書に記載されている性能を実現しないことやすぐに壊れてしまうことも多い。
 計量器の改良には、精密さを向上させること、測定範囲を広げること、壊れないようにすること、コンピュータなどとの連動によって新機能をつけること、生産費を下げて市場競争力のある価格にすること、などがある。改良をこえるものとして新概念の商品の開発がある。携帯電話の機能と計量器の信号をつなぎ合わせることが盛んにおこなわれている。左右均等の竿をもつ化学天びんを直示方式にした直示天びんは大きな改良であった。直示天びんが電子的なデジタル方式に変わって電子天びんや電子ハカリが登場したのは大きな改良であった。料金を計算する方式を組み込んだのもそうである。体重などと関連する諸要素から、体脂肪など身体の成分を表示することもしてきた。測定した質量を組み合わせること、選別することなどもなされている。この先のことは各企業が密かに案を練って新概念の商品を開発している。

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