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日本計量新報 2008年9月21日 (2741号)

計量行政費用の削減は計量法完全実施という偽装の温床になりかねない

検定有効期間切れの水道メーターが使われるという計量法違反が見つかった。その数が少なくはないから、その事態をどのようにとらえるか。
 水道メーターの持ち主は自治体の水道部などであることが多い。役所が管理不備によって計量法違反をするのだから変だ。検定があるガスメーターなどでも似たようなことが起きている。ハカリ(質量計)は検定の後継続して使用していれば、定期検査に合格することで継続使用できる。定期検査の公差(器差)は検定公差の2倍である。そのハカリがどの程度定期検査を受検しているかというと、とても100%の受検率であると言える状況ではない。役所(検定所や検査所)の台帳から記載漏れしているハカリの大部分は定期検査が実施されないと考えていい。検定や検査がある計量器(特定計量器)が、計量法に適合した使われ方をしているかどうかは年を経るごとに悪化しているという観測があるから穏やかではない。
 自治体の水道局や水道部の水道メーターの計量法への適応に関して、計量関係の役所から適切な説明が行われているか、また水道事業運営の当事者がその内容を理解しているかというと、そこに大きな抜かりがあると断じてよい。知らなければ悪いことをしても自覚がないのだから恐ろしい。
 同じことが先に述べたガスメーターやハカリなど多くの計量器の使用状況下にあるようだ。悪意なく、計量法に適合しない状況が出てくることはある程度は仕方がないことではあるが、計量行政を担う役所の知識や技術、意識の後退や緩みによって多発するから、ここら辺で引き締めをすべきであろう。地方公共団体に事務が移管されている自治事務としての計量行政は、お金がなくても人がいなくても適切に実施されなければ日本の計量の安全や安心は確保されない。
 自治体が売る水道の水が不適正な計量器(水道メーター)で計られているのでは、取り引きの信頼が崩れる。袋詰めされた商品やその他生活物資の内容量に不信感が生じては暮らしが成り立たない。計られたその内容が信頼できるものという前提で商取引と消費生活が成り立っているのである。この前提を確保するために、総合すればほんのわずかの人とお金と組織体制を敷いているのが計量行政であり計量の制度である。ドイツをはじめ、ヨーロッパほかの先進国では商取引と人の暮らしの安全を確保するためにこれらは厳格に実施されている。

 埋め立て地の土壌検査において、4カ所の計量証明書を出すべきところを、1カ所の計量証明書をコピーして偽装する事件も発覚するなど、計量法の違反行為が相次いで見つかって新聞やラジオ・テレビで報道されている。計量法の施行が十分でないにもかかわらずこれが事足りていると考えて、その自治体のなかで多くの計量法違反が発生しているが、これでは社会保険庁の年金記録の不祥事と同じようなことになる。見方によっては、計量法完全実施を偽装しているのが計量行政機関であるということになる。自治体にお金がなくても計量法の適正な施行はなされなければならない。
 お金と人と運営の仕組みが崩れた状況下では、社会保険庁と同じように計量法完全実施という偽装の温床になりかねない。


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