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日本計量新報 2007年6月17日 (2679号)

「測って知って対応しよう」計量管理は人類普遍の管理術である

計ることは知ることである。気象を知るために気象の各種の要素を計ることが行なわれており、アメダスはその象徴である。アメダスの観測所は現在は1300カ所になっている。アメダスは1974年11月1日から運用が開始されている。アメダス(AMeDAS)とは「Automated Meteorological Data Acquisition System」の略で、「地域気象観測システム」という意味だ。アメダスは雨、風、雪などの気象状況を時間的、地域的に細かく監視するために、降水量、風向・風速、気温、日照時間の観測を自動的に行い、気象災害の防止・軽減に重要な役割を果たしている。アメダスの観測所約1300カ所のうち、約850か所(約21キロメートル間隔)では降水量に加えて、風向・風速、気温、日照時間を観測しているほか、雪の多い地方の約280カ所では積雪の深さも観測している。
 アメダスが観測している降水量、風向・風速、気温、日照時間の内容は次のとおり。
 (1)降水量とは降ってくる雨や雪の量のこと。0.5mm単位で表す。雪やあられなどは溶かして水にしてから観測している。(2)風向とは風の吹いてくる方向のこと。北、北北東、北東、東北東、東、東南東、南東、南南東、南、南南西、南西、西南西、西、西北西、北西、北北西の16方向で表す。観測前10分間の平均値で表示する。北東の風とは北東から吹いてくる風のこと。(3)風速とは風の速さのこと。1m/s単位で表す。観測前10分間の平均値で表示する。(4)気温とは空気の温度のこと。0.1℃(摂氏)単位で表している。(5)日照時間とは太陽が照らした時間のこと。0.1時間(6分)刻みで表す。例えば11時から12時の1時間にすべて太陽が照っていたら1時間と表す。(6)積雪の深さとは積もっている雪の地面からの高さのこと。1cm単位で表す。
 気象庁のアメダスは温度計測を湿度計測は、地上高1.5メートルの電気ファン付きの通風筒に入れられた白金抵抗温度計と静電容量湿度計によって行っている。小学校、中学校、高校などの中庭などに設置されている気象観測用の百葉箱には温度計、湿度計、気圧計などが納められている。ところが気象庁は1993年1月に気象の自動観測機器の普及に伴い百葉箱での観測を廃止している。
 気象業務に関係した気象観測を行う場合には気象業務法の定めにしたがって気象測器の検定を受けていなければならない。政府機関または地方公共団体が気象観測を行う場合、又はそれ以外の者が災害の防止に利用する等のために気象観測を行う場合には、一定の精度をもつ気象測器を使用する必要がある。このため、温度計、気圧計、湿度計、風速計、日射計、雨量計及び雪量計の7種類の気象測器について、観測に適した性能を有しているかを検査する「検定」が義務づけられている(気象業務法第6条及び同9条)。ただし、研究や教育の目的で気象観測を行う場合、観測成果を発表しない場合、及び防災のために使用しない場合などは、使用する気象測器は検定を受ける必要はない。
 検定の概要をかいつまんで説明すると、検定は、その気象測器の種類に応じて材料、部品及びその組み合わせ等が適切であるかを調べる「構造の検査」と個別の精度を調べる「器差の検査」を行う。また、必要な測器については検定の有効期間(例 風車型風速計は5年)を定めている。この検定の実務は、国により登録された登録検定機関が実施している。なお、気象庁があらかじめ構造・性能を検査し、「型式証明」を行った気象測器については、「構造の検査」を省略することができるとともに、認定測定者制度を利用することができる。
 気象庁では、日照計や震度計など、検定の対象となっていない特殊な機器についても、一部受託による検定を受け付ける委託検定制度がある。また、認定測定者、型式証明、委託検定等、気象庁への各種申請についは電子申請による受け付けも行っている。検定は気象業務法により、気象庁長官の登録を受けている者が行うこととされており、現在、「(財)気象業務支援センター」が登録を受けている。
 気象を知るには降水量、風向・風速、気温、日照時間などを計ることである。農業分野では果樹栽培その他高付加価値の農業経営にとっては、施設のある小さな地域の気象観測が求められる。土中の水分を適正にするためのスプリンクラーなどによる散水も測定の結果であり、散水するときの温度条件の選定もうることになる。
 農業経営に関係する気象観測においては気象庁の検定を受けた測定器を使用する必要はない。温度と湿度の測定も気象庁の方式を用いなくてよい。ただし温度と湿度の測定は気象庁の測定条件と環境条件をあわせることが求められ、その一つの方法が百葉箱を用意してその中に温度計や湿度計あるいは気圧計を設置するとよい。回転式のドラムに温度、湿度、気圧を記録する自記式の計測器があるからそれを設置すれば、実質上無人観測ができる。また測定データを電子的に記録する温度計などもあるのでそれを使うのその方法である。
 気象観測は公的な観測とは別に事業上の必要などによってスポーツ施設、公園、農業施設ほかでも広く行われるようになっている。温度や湿度の測定は人に与えられるものではなく必要に応じて自らの手で行うべきものである。計ればわかることを計らないために知らないでいることは愚である。
 百葉箱は温度や湿度を一定の環境下で測定するために工夫された測定箱である。気温や湿度は同じ場所で測定する場合でも直射日光が当たる条件とそうでない条件では大きく測定値が変わる。日本のどの場所で温度や湿度を測定しても測定の条件が同一になるようにするために用いられるのが百葉箱だ。
 百葉箱は屋根を付け側面や下部をよろい戸で囲うことによって直射日光や雨などの影響がないような箱形の構造をし、地面からの照り返しなどの影響をなくするために足を付けて地上から1・5メートルほどに設置する。また外側は日光を反射しやすいように白く塗る。
 設置の高さの1.5メートルというのは厳密にセンチメートル単位で設置することが絶対的に求められているのではないが、世界気象機関は、地上1.25メートルから2.0メートルと規定している。気象庁のアメダスの温度と湿度の観測が地上1.5メートルで行われているから、百葉箱のなかの温度計や湿度計の設置位置は地上から1.5メートルになるようにするとよい。冬期に積雪で埋もれてしまう場合にはどうするかは個々の測定場所で工夫すること。
 設置場所の下部には芝草が植えてあるとよい。原則として芝草を植えられていることになっているが、芝が育たない地域があったり手をかけられない場合もあるのでこれも絶対ではない。ただし下部をコンクリートで敷き詰めておくと、このコンクリートが太陽光で暖められて温度に影響するからこのようなことは避けなければならない。絶対に芝草を植えなくてはならないと考えずに雑草が生えても丈を伸ばさないように管理すると考えたらよい。
 前述のとおり気象庁は1993年1月に気象の自動観測機器の普及に伴い百葉箱での観測を廃止している。気象庁のアメダスは温度計測を、湿度計測は、地上高1.5メートルの電気ファン付きの通風筒に入れられた白金抵抗温度計と静電容量湿度計によって行っており、接地面には芝草が植えられているので、百葉箱はアメダスと測定条件をそろえると温度や湿度の比較の意味でも都合がよい。また百葉箱の扉を開けたさいに直射日光が当たると瞬時に気温が上昇するので、扉は北向きに設置する。
 気象庁がアメダスで使用している温度計は、白金という金属の電気抵抗を利用した電気式温度計だ。金属は温度によって電気抵抗の値が変化する特性があり、白金測温体はこの温度特性に優れており、精密に温度を測定する。アメダスで使用している白金抵抗体はマイナス20℃で92.02オーム(オームは抵抗の単位)、0℃で100.00オーム、20℃で107.93オームを示す。抵抗値の変化幅は、10℃で約4オームだ。この白金抵抗体の抵抗値を電気的に測定することによって気温を求める。
 ニュース番組の最後に毎度登場するのが良く当たるようになってきた天気予報だ。ごく狭い地域の気象の予測は温度や湿度などの観測を通じて行うことができる。またそうした気象の観測は農業施設における各種の管理業務とも連動する。自然の恵みとしての水分が十分でないときには少し雨をスプリンクラーで足してやって、温度が高くなり過ぎるときには扇風機で熱を散らしてやってと、人が知恵を添えてやると物事が上手くいく。果樹園や酒造りの現場でモーツァルトの音楽が流されると出来が良くなるということは結果はあってもそれは科学的には解明されていない。
 計れることは知ることであり、知ることができれば対応もできる。「計れるものは造れる」ということを合い言葉にしている企業がある。測って(計って)知って、しっかり対応することは計測を応用した管理であり、計量管理でもある。計量管理は人類普遍の管理術である。


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