日本計量新報 2011年1月1日 (2852号第2部)
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大正池をつくった火山、焼岳
写真は、上高地バスターミナルからみえる焼岳(やけだけ)(標高2,455m)。
焼岳は活火山。長野県と岐阜県にまたがる飛騨山脈の一峰で、上高地の西にそびえている。噴煙は風向きによって上高地から見えたり見えなかったりだ。日本百名山となっているので、その踏破のためてこの山を登る人もいる。
1915(大正4)年6月6日の焼岳噴火の際、梓川が泥流によって堰き止められて大正池ができた。池に残された樹木が白骨樹となって立つ風景は、この地を有名にして観光客を呼びよせた。
大正池から上高地の小梨平付近までの唐松林の散策を、詩人の尾崎喜八が詩にしていて、この地のすばらしさを見事に表現している。
日の長い夏の日に大正池や上高地を訪れると、自然のすばらしさと生きていることの幸せを感じる。何もかもが人工物でできている都市は、公園の緑さえも実際には人工物である。人工物は人を疲れさせる。生物多様性だ、地球温暖化だ、自然破壊だと、ちまたにあふれている論理には、私はどうもなじめない。自然のなかで活動する鳥や蝶や動物や花の素晴らしさを知ってこそ、真に自然の大切さを知ることができる。
そうした実感をもたないで自然のことを語る人々には、軽薄さを感じる。地に足が着かない論理の先には、危険が待っている。
(文章は旅行家 甲斐鐵太郎)
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