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2007年3月11日 (2667号)

計量ミスで、タミフル3・75倍調剤
単位をもんめ(mom)に設定、川崎市の診療所で

生命の安全・安心に関わるものは慎重な対応が必要

神奈川県川崎市の高津休日急患診療所で2月25日、調剤に使っている天びんの計量単位が、もんめ(mom)になっているのに気づかず、抗インフルエンザ薬の「タミフル」を、1回あたりの必要量の3・75倍過剰に調剤するミスがあった。小児3人に誤った調剤をしたが、これまでに問題は起きていない。川崎市は、全区の休日急患診療所で、計量単位をグラム(g)に固定する措置をとった。


2月25日、高津休日急患診療所でインフルエンザと診断され、タミフルのドライシロップを調剤された高津区内の五歳男児の親から、「薬の量が多すぎるのでは」と問い合わせがあり、調剤ミスがわかった。原因は、調剤用の天びんの計量単位がグラム(g)でなければならないのに、もんめ(mom)に設定されていたため。一もんめ(匁)は3・75グラムなので、3・75倍のタミフルのドライシロップが調剤がされた。3人の児童に過剰調剤されたが、副作用などの問題はなかった。調剤をした各診療所の薬局は、川崎市が市薬剤師会に業務を委託している。
 タミフルの副作用が問題になっており、厚生労働省も、タミフル服用による転落死等の対策などの説明を、患者・家族に対して行うよう医療関係者に注意を喚起していることから副作用が心配された。
 調剤に使った天びんは「調剤用、その他取引・証明用に」として販売されているもので、検定合格品(基準適合証印付)。2年ごとに受ける定期検査にも合格している(06年度受検)ので計量器として何の問題もない。
 調剤用として適しているが汎用的な使い方もできるように、グラム、もんめ、パーセント、個数の4つの計量モードが切り替えられるようになっている。本体正面にある「MODE」ボタンを押すごとに、4つの計量単位が順に切り替わるようになっている。
 今回の調剤の際に、グラム(g)であるはずのものがもんめ(mom)になっていたために、調剤ミスが起こった。通常の使用には便利な、簡単に計量単位を切り替えられるしくみが、あだになった形だ。
 このメーカーは、今後は不適切な使い方によるミスが起きないように、調剤用に使う場合には、計量単位をグラム(g)に固定して使うようにという注意書きを製品に同梱する予定である。

人間は必ずミスをする

 計量器も通常はより便利な使い方ができるように工夫されている。コスト効果の面からも多用途に使える天びんが有利だが、調剤のように生命や身体の安全・安心に関わる使い方をされる場合は、慎重な対応が求められる。人間の操作にミスはさけられないので、計量器が生命や身体の安全・安心に関わる使い方をされる場合は、人間がミスをしても大丈夫なような対策をすることが求められる。

販売時点での周知は困難

 また現在は、計量器の供給ルートは、計量器専門店のほか、家電量販店、ホームセンター、インターネット販売など多様化しており、計量法上の販売の届け出もしていない事業者も見受けられる。
 販売に関する実質的な規制はないといってよい状況で、計量器の使われ方を把握して計量器に関する適切な情報をユーザーに伝えることは難しい。結局は、問題が起こってから対策をとることになる事後規制は、少なくとも生命の安全・安心に関わる分野には適さないことになる。

対策をとっているメーカーも

 調剤用に使う天びんは生命の安全・安心に関わるものであるとの認識から対策をとっているメーカーもある。
 あるメーカーの調剤用天びんにも、カラット(kt)、もんめ(mom)に切り替えられるタイプがあるが、出荷時にはグラム(g)での測定しかできないように設定されている。ほかのモードを使う場合には、使用者が意図して「測定モード」の設定を変更する必要がある。うっかりミスで、計量単位が変わることがないようにするためである。
 カラット(kt)、もんめ(mom)は計量法で、使用できる場合が限定されている。このメーカーは、カラットを使う場合は、メーカーが作成した「宝石用シール」、もんめは「真珠用シール」を、はかりに貼って使うよう、取扱説明書に記載している。
 また「計量法でカラットモードは宝石専用の測定に限り、もんめモードは真珠専用の測定に限ります。この計量単位を使って他のものを計ることはできません」との注意書きを、取扱説明書に入れている。

2007年3月11日 (2667号)

第57回計量士国家試験、3月4日実施
全国9会場で、出願者数は前年比95・9%


毎年、3月の第一日曜日に実施される計量士国家試験が、3月4日に全国9会場で9時20分から実施された。計量士国家試験は、適正な計量の実施の確保を推進するため、計量に関する専門知識・技能を有する者の養成を目的として、毎年1回実施されている。受験・応募資格に特に制限はなく、だれでも受験できるため、受験者は幅広い。
 今年の出願者は前年比95・9%と減少し、1万651名だった。試験の区分別では環境計量士(濃度関係)が7345名(前年比96・0%)、環境計量士(騒音・振動関係)が1945名(前年比89・9%)、一般計量士が1361名(前年比105・5%)となっており、受験者数が多い環境計量士の出願数が減ったことが、今年の出願者数減に影響した。一般計量士の受験者は増えた。試験当日の受験率は、次号以下。
 合格発表は5月末頃の予定で、 本紙上及び計量計測データーバンクのほか官報、経済産業省ホームページ(http://www.meti.go.jp)に掲載される。
 昨年実施の計量士国家試験は合格率が、環境計量士(濃度関係)12・0%、環境計量士(騒音・振動関係)15・5%、一般計量士25・8%で、実施年によって増減はあるが、難しい資格試験のひとつである。
 計量士制度は、「経済取引の発達、産業技術の進歩等これらに関して要求される計量技術が高度化・専門化するようになったことを踏まえ、計量に関する専門の知識・技能を有する者に対して一定の資格を与え、一定分野の職務を分担させることにより、計量器の自主的管理を推進し、適正な計量の実施を確保することを目的」としている。出願者数が多い環境計量士は1974年に創設されたもので、1992年に「濃度関係」と「騒音・振動関係」に区分された。計量士になるには国家試験を受験するほかに、(独)産業技術総合研究所計量研修センターに入所して所定の講習を修了する方法がある。

2007年3月11日 (2667号)

06年度第2回国計連開く
設置要領改訂を協議

2006年度第2回国際計量研究連絡委員会が、2月28日、東京・六本木で開かれ、設置要項の改訂などを協議した。指名計量標準研究機関、光格子時計などが説明された。


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