What's New計量新報記事計量計測データバンクOther Data会社概要出版図書案内リンク

 

 2003年6月15日(2495号)


■【原子泉方式の原子時計を開発】世界最高水準で標準時の進み方を監視=ずれは2000万年に1秒以下

 (独)産業技術総合研究所計測標準研究部門(NMIJ)は、高精度原子時計の「原子泉方式一次周波数標準機(JF−1)」の開発に成功した。これは、世界中の標準時のおおもととなる協定世界時(UTC)の進み方を監視するためのものである。また、原子泉方式による原子時計の開発は日本で初めてであり、世界でもその精度は、仏・米・独でしか実現されていない。秒の定義からのずれは、2000万年に1秒以下であり、幅広い応用が期待されている。

----------------------------------

  (独)産業技術総合研究所計測標準研究部(NMIJ)が今回開発した原子泉方式一次周波数標準機(JF−1)は、2000万年に1秒も狂わないという高精度原子時計である。

 現在、秒の定義はセシウム原子が放出・吸収する電磁波の周波数を基にしている。この周波数を計測するため、従来方式では、熱したセシウム原子をマイクロ波と相互作用させていた。

 新しく採用された「原子泉方式」では、セシウム原子を絶対零度近くまで冷却し、運動量が小さい状態でマイクロ波と相互作用させている。その結果、セシウム原子とマイクロ波の相互作用時間を長くとれることにより、測定の分解能が向上した。また、ドップラー効果や相対論的影響を小さくできることで、従来方式に比べ1桁以上正確さが向上し、秒の定義をより正確に実現できるようになった。

 今回の開発には、極めて高い技術が必要であった。原子泉方式による一次周波数標準器の運用に不可欠なレーザー冷却技術を応用した原子操作と、それを可能にする超高真空技術を開発した。またレーザー光源やマイクロ波発生装置を制御し、実用標準器として運用する際に必要な制御装置のハード・ソフトウェアの両面における開発も行った。この結果として、秒の定義であるセシウム原子の遷移周波数に同調させることに成功した。同時に、マイクロ波と相互作用する領域の磁場のようすや原子の密度・運動状態などを調べ、同器の正確さ、マイクロ波の周波数の秒の定義からのずれが1・4×  −1510(2000万年に1秒以下)であることが確かめられた。

幅広い分野への応用

 国際的な標準時である協定世界時の進み方の監視を定期的に行うことで、国際社会で化学技術分野への貢献ができる。また、正確な時間周波数源として、基礎研究を始めとする、衛星を使った測位技術の向上、基礎物理定数の精密測定、相対性理論や量子力学の検証、また重力波の検出などへの応用が期待される。

開発までの背景

 高精度原子時計「一次周波数標準器」は、協定世界時の進み方を監視するための装置である。およそ10年の間に原子泉方式という新しい方式が提案され、開発された。しかし、レーザーを使った原子操作など技術課題も多く、現在、フランス、アメリカ、ドイツで開発されたもののみが運用されている。また、それらも運用頻度が低く従来方式の標準器も台数が不足していることから、協定世界時の進み方が秒の定義に一致しているかが正しく検出出来ないという事態も起きている。

 そこで、国際度量衡委員会(CIPM)は、国際原子時が秒の定義を実現するために必要な一次周波数標準器の開発・運用を各国に対して勧告していた。

  2003年6月15日(2495号)

 ■【JCSS校正事業者が認定から登録へ】 衆議院本会議で可決

 衆議院は、計量法の一部改正を含む法律案「公益法人に係る改革を推進するための経済産業省関係法律の整備に関する法律案」を6月3日に賛成多数で可決。同法は成立した。

 3月17日に参議院へ提出されたもので、計量法の改正はJCSS校正事業者について、「経済産業大臣の認定を受けることができる」制度を「経済産業大臣の登録を受けることができる」制度に改めるもの。公益法人改革の法改正の一環。改正法は、一部を除いて2004年(平成16年)3月1日から施行される。

 法律は第143条2項で「経済産業大臣は、前項の登録の申請が次に掲げる要件のすべてに適合しているときは、その登録をしなければならない」と、行政の裁量余地を排除している。登録要件は@「特定標準器による校正等をされた計量器若しくは標準物質又はこれらの計量器若しくは標準物質に連鎖して段階的に計量器の校正等をされた計量器若しくは標準物質を用いて計量器の校正等を行う」、A「国際標準化機構及び国際電気標準会議が定めた校正を行う機関に関する基準に適合する」の2点。

  2003年6月15日(2495号)

 

<<<<<<<<記事目次       本文一覧>>>>>>>>

Home


(株)日本計量新報社