ホーム・計量計測データバンク2005年度計量法改正情報BOX>座談会(2007/03/14)【5】

計量制度見直し座談会
   法改正が計量士、計量事業者などにどのように影響するか

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【5】

地方計量行政の危機が深まる

計量行政に従事する人々の気概のなさがわかる

横田俊英 私は法改正が先送りになったことは結果的に多くの人々にとってよいことだと考えます。もちろんすぐにでも手を付けなくてはならない事項もあるかと思われますが、練り込みが足りないままで走ると取りこぼしがでますから、そのことによる被害が大きくなったのではないかと考えます。

 地方自治体が自分たちの仕事を指定定期検査機関などへ全部放り投げてしまったら、計量検定所や計量検査所の機能は残らないですよ。組織も体制も人員も予算も何もかもの地方計量行政が崩壊します。行政の組織は一度崩れたら二度と回復はしません。計量行政などは特にそうです。保健所業務などは規制緩和時代に規制強化が相次いでいることと照らし合わせると計量行政に従事する人々の気概のなさがわかります。

横尾明幸 業務を個々に、他へ移していくというのはわからなくもないのですが、肝心なのは計量行政の主体は誰であるのか、どこであるのか、ということです。それまで投げ出してはいけないのではないかと思います。今のような形では、そこまで投げ出しているのではないか、と言われてもしかたないと思います。

 今大丈夫な自治体でも、所長が替わるなどの体制が変化すれば、あっという間に、主体も含めて全部投げ出す方向に変わってしまう危険がある、と思います。そういう実例は今までにもいっぱい見てきています。

地方計量行政存続の危機はつづく

森川正彦 予算も含めて、上層部からの締め付けは相当なものでしょうから、横尾さんが指摘する危険性はそのとおりだと思います。

横田俊英 地方計量行政の仕事などを理解するための教育はどのようになされているのでしょうか。「計量大学」などということがときどき聞かれますが、計量行政のための教科書などを一般に開示したらどうでしょうか。あるいは計量行政の教科書や実施要領などの文書はないのかもしれません。

計量行政の心をしっかりとつなぐ方法を確立する

横尾明幸 計量に関する文献なども少ないのが現状です。ある県の新任検定所長が、計量に関して勉強しようと図書館に行ったらほとんど資料がなかった、というようなことを言っています。

横田俊英 私は計量研修センターで、計量行政や計量検定所や計量検査所の仕事に関するガイドブックをつくらなければならないんじゃないかと思います。

横尾明幸 計量研修センターでは、新任の所長のためのカリキュラムがあって、私も講師をやったことがあります。しかし受講は義務ではないですから。

 また各検定所や検査所でも人事方針の関係で、計量行政を熟知した職員がいなくなっています。そういう職員もいなくなったら、それこそ何もわからなくなります。

森川正彦 部下や計量協会の人に、自分が知らないことを気軽に聞ける所長さんだったらまだよいのですが、そうでなかったら気の毒なぐらい、計量行政に関する知識がないまま行政をやっていくことになります。これは怖いです。

 今や規制緩和や民活は至上命令です。そういうことも、行政に人や権能を残して、民間に仕事を出すのならよいのですが、大多数はそういうふうにはなってないですから大変です。

計量行政は計量の保健所のようなものだ

横田俊英 計量検定所や計量検査所は、計量の保健所みたいなものです。本物の保健所関係の業務は、生命・身体の安全・安心に関わることとして強化されていますが、計量行政のほうは、いらないということで丸ごと捨てられています。

森川正彦 民活にすれば人はいらないからということで、先に定員を減らしてしまうのですから。

横尾明幸 私が一番心配しているのは、そうなったときに、行政の肩代わりができる技術的な能力を持った人だとか、組織があるかというと、ないのですよ。

森川正彦 つまり、お金の面でも行き詰まり、技術能力でも行き詰まるわけです。実際には民活のリソースはないのです。

計量行政は規制緩和と民活の鋳型にはめ込んではだめだ

横尾明幸 そこのところの対策がとれない計量制度の見直しでは意味がありません。規制緩和と民活の鋳型に、無理矢理はめ込もうとしてもだめだということです。

横田俊英 計量を後退させないということは、適正計量の実施の確保、正確計量を推進するという意味です。

 今、地方の計量協会は、財政なども大変な状況になっています。指定定期検査機関になっているある計量協会では、県当局がそのためのお金をうんと減らしてしまったために、協会の資金では負担しきれなくなってしまいました。行政当局が、必要なお金も出さなくなっています。

ハカリの定期検査業務はどのようになる

高松宏之 代検査業務だけをしていたときには、かなり豊富な資金を持っていたのですが、それが、あっという間にそういう状況になってしまいました。

横田俊英 はかりの定期検査に必要なお金は、行政がきちんと出す必要があります。そうでないと、とんでもないことになってしまいます。

森川正彦 東京都は計量協会に業務を委託する場合に、これまでは、その仕事をしていた係を何人か削減する、そしてその削減した分の費用を原資にして、協会へ仕事を委託してきました。そして指定定期検査機関の管理責任者として担当係長を一人おいていました。大型と中型のはかりの検査に関してはこの方式です。東京都は小型はかりも指定したい意向です。ところが小型はかりの場合は、これまでとはちょっと事情が違うので、大変です。

横田俊英 計量協会の側でも、協会の業務に精通している人と情熱を持ってやっている人が少なくなってきました。

指定定期検査機関によるハカリの定期検査実施は全うできるのか

横尾明幸 指定定期検査機関で、従来は、足りなかったら行政が補助金を出しますよ、となっていたものが、補助金が大幅に削減されたり、ゼロになってしまうところが多くでています。こんな状態なら指定定期検査機関にならなかったほうがよかったということになってしまいます。

横田俊英 先の座談会で、全国の代検査の実施率が50%だという話がでました。指定定期検査機関が増えていくと、行政から委託された代検業務を圧迫する、成り立たなくなるという声も、全国計量士大会ででていました。

森川正彦 協会が代検を実施しているところは、補助金事業が多いと思うんですよ。

 たとえば埼玉県では、指定定期検査機関になる前は、協会は県から補助金をもらって代検査業務をやっていました。それを指定定期検査機関になるときに、行政の委託業務に切り替えました。ですからやっていけるのです。もし補助金事業のままだったら、補助金をぽんと止められたらそれで終わりです。業務委託の場合は一応コストを算出したうえで委託していますから。

ハカリの定期検査は行政の丸投げでは崩壊する

横尾明幸 補助金だと3年から5年でゼロになりますね。

森川正彦 また特定市との関係では、特定市に検査のシステムを残してあります。検査システムを残しているところとしか、やらないのです。その構造は必ず維持させています。

 行政の丸投げでは絶対にだめになります。特定市だって金がなくて検査業務はやれないから特定市を返上する、といった事態にもなります。

横田俊英 今後、計量検定所、計量検査所がどういうふうに動いていくでしょうか。

横尾明幸 私は、今回の法改正論議のなかで、地方と国との役割分担を明確にして欲しかったですね。

 立入検査にしても、しなければならないではなく、することができる、でしょう。これでは地方分権になれば、やらなくなるのは当たり前です。

計量行政は前進しなくてはならない後退を食い止めろ

横田俊英 計量行政は後退してはならない。むしろ地方計量行政における大きな前進を模索しなくてはならない。

高松宏之 行政の役割は何なのかということを、改めて考えて欲しいと思います。指定定期検査機関にしても、指定検定機関にしても、儲かる仕事なら、促進策などとらなくても、民間企業がなりたいなりたいと殺到してきますよ。それがないということは儲からないということでしょう。そういう民間がやってもペイしないけれども、国民にとって必要なことであれば、たとえ赤字でも遂行する、それが行政の役割であり、仕事だと思います。国民の税金を使う仕事というのは、そういうものだと思います。民間がやってペイする仕事は、積極的に民間に任せればよいのです。

外乱としての規制緩和攻撃に計量行政が負けている要因はどこにある

横田俊英 計量のプロである職員が非常に少なくなっております。このことが外乱としての規制緩和攻撃に計量行政が負けている要因でもあります。

横尾明幸 東京都でも傾向は同じです。いわゆる検定所でたたき上げた人はいなくなります。

計量協会と計量の活動との絡み

横田俊英 計量協会の組織、活動が残念なことに活発性を欠くようになっております。計量士の登録の更新制で計量協会や計量士会の活動が元気になるとよいですね。

森川正彦 東京都の場合は東京計量士会は団体会員です。計量士会が強化されれば大変よいと思いますが、直接、協会の組織率の強化というようにはならないですね。

 計量証明の関係は協力的です。検査の関係でつながりもありますから。

 適管事業所の関連では、東京都計量管理研究会が解散しましたが、改めて計量協会への加入を呼びかけた結果、20数社が計量協会に加盟しています。また既存の会員で、計量管理部会に入ってなかった数社が部会に入りました。

 ただ廃業がでて計量協会の会員数が減るということが多くなってきました。販売事業者も少なくなりました。

ホームセンターがらみでの計量器の流通が増えている

横田俊英 薬局、金物店なども減りましたね。

森川正彦 DIY(ホームセンター)関係で計量器が相当売られていますが、これらの関係は、行政が相当指導しないと、計量協会に加入しません。販売事業者の届けをしていないところも、数多くあります。

 梱包資材や食品加工のルートでも、計量器が売られていますが、そういうところは販売者の届け出などの意識がまるでないですね。インターネットでの販売でも同じことがいえます。計量に関する知識そのものがないところがあります。

地方の計量行政が抱えている問題はますます悪化していく

高松宏之 問題を先送りしただけですから、計量制度見直しの動機の一つになった、地方の計量行政が抱えている問題はますます悪化していくでしょうね。

横尾明幸 体力格差ではなく、総弱体化です。

横田俊英 計量行政機関が体制をなんとか維持していくことが大事ですね。計量士さんにも頑張っていただきたい。

ヨーロッパでは基本的な制度がきちんとできていてそのうえで民活をしている

森川正彦 欧州も民活路線ですが日本とは状況が違うと思います。やらせていることの水準がだいぶ違うのと、行政からも相当お金がでています。

 計量というものは、人材の育成、技術の習得、設備投資、などどれをとっても、公的な資金の援助がないと成り立つはずがありません。

横尾明幸 ヨーロッパでは、計量制度の考え方がきちんとしています。そのうえで、この部分は民活で、などとやっているわけですから、ペイしないときにはそれなりの公的資金がでています。民活の上っ面だけを見てまねしても失敗します。日本の場合は、それ民活だというと、状況も何も考えずに、みんな民活だ、ですから。

 それから、ヨーロッパの各国では、規制を外してはいけないというものは、頑固なくらいに外しません。ユーティリティーメーターなどは絶対に外さないですよ。新たなユーティリティーメーターが開発されれば、直に規制対象にしています。

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