計量器には用途がある。それを使用する人の目的はある程度明確であることが普通であり、銭湯で体重を計る場合には検定付きで表示部が目の高さにあるガッチリした構造の耐久性と精密さを兼ね備えたハカリが設置されることが多かった。銭湯に設置される体重計には検定付きである必要はないが、慣例的にそのようになっていた。ところが今の温泉施設や旅館には490円で売っていることもある薄型のハカリでヘルスメーターが設置されていることが少なくない。目の高さに表示部があれば見やすいことは歴然であり、精密さにおいても明らかな差があるにもかかわらず、昔から銭湯で使われていたような体重計が設置されないことは、その用途を考えると残念なことである。温泉施設で使用される体重計の使用頻度は家庭におけるそれとは大きな差があり、たとえ頻繁に体重計を更新するといっても納得できることではない。
銭湯のハカリに検定付きのものが使用されていたが、これにはその必要は法的にはないことを次に説明しておく。
ハカリが計量法の規制を受けのは「取引」および「証明」に関する行為に係わってであある。「取引」とは物または役務の給付を目的とする行為のこと。一般の商店が行う商業取引と考えてよい。「証明」とは一定の事実が事実であるむねを表明すること。一般の商店などにおけるハカリの使用は「取引」に関する行為である。「取引・証明」にハカリを使用する場合には検定証印付きあるいは基準適合証印付きが条件となる。「取引・証明」以外の用途にはかりを用いるのであれば、検定証印付あるいは基準適合証印付きである必要はない。商品の内容量についての計量結果の表明に関しては、取引当事者間における計量およびその計量結果の表明は取引上の計量であり、取引当事者以外の第三者による計量およびその計量結果の(両者又はいずれかの一方の)当事者への表明は証明である。
以上のような前提にたって実際に生ずるどのような事例が検定証印付きあるいは基準適合証印付きで定期検査の受検を要するかは次のとおり。(1)商店等が顧客に品物を計って売る場合。(2)計量証明事業者が証明書を発行することを目的として計る場合。(3)医師の健康証明書に記載するために体重を計る場合。(4)体重別等のスポーツ競技において選手の体重を証明するために計る場合。(5)学校等における体重計=学校、幼稚園、保育所又は福祉施設等の体重測定に使用される非自動はかりであって、その計量値が健康診断票等に示され通知、報告されるものについては、証明における計量に該当する。(6)小包郵便物および一般郵送事業者の宅配便の取次業者の取次店における料金特定のための計量は、取引における計量に該当する。
検定証印付きあるいは基準適合証印付きである必要のない使用例は次のとおり。(1)工場等の製造設備ライン等で製品の品質を高めたり、合理化等を目的としてはかりを用いる場合。(2)各種の試験・研究、薬品の開発等で超精密な計量を行うのにはかりを使用する場合。(3)私的に各種の品物の質量の差異を調べる場合。(4)有料体重計=目安程度のものであれば証明における計量に該当しない。以上のことと重複すらが次のようなことも取引・証明に該当しない。(1)製造工程における内部的な計量。(2)日曜大工などにおける家庭内での計量。(3)参考値の付与。(4)カタログ上の数値。
なれない人など普通の人が普通に考えても、使用目的に適合したハカリほか計量器の選定が難しい。こうしたことへのコンサルティング機能を計量法の届出販売事業などが担ってきて、それがある程度上手くいっていたのであるが、現状では以前にましてこのことが怪しくなってきている。
計量法は適正な計量の実施の確保のために取引や証明の行為にかかわっていろいろな人々に義務を課していても、その義務を理解できないのが昔からある問題点だ。計量器販売店などの販売行為のなかで実施されてきた順法のためのハカリなど計量器の選択や使用の実際にかんしてのコンサルティング機能を果たす何かが必要になっている。法に準拠した企業活動、経済活動を心置きなく行えるようにすることの支援こそが、計量法にかかわっている人々の務めである。また用途に適合した計量器の選定の相談窓口も必要であり、その一方そうした相談をする購買者は心を開いて使用目的を語ることである。名医と言われる人は患者からどこがどのように具合が悪いのか聞き出す人だといわれる。病気を発見したり良い治療を受けるためには患者の側もどこがどのように痛いのかなどを上手く説明できなくてはならない。計量器の購買のための選定にも同じことが言える。
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