1.計量の基準
世の中には「長さ」、「質量」、「時間」など、数値でその大きさを表すことができる事象や現象があるが、計量法ではこうしたものを「物象の状態の量」と呼称している。計量法では、対象とする「物象の状態の量」を、それらが取引又は証明、産業、学術、日常生活の分野での計量で重要な機能を期待されているという観点から規定しており、「物象の状態の量」として熟度の高いものを法律で72量(法第2条第1項第1号)、熟度の低いものは政令で17量(計量単位令第1条)を定めている。以下にそれらを示す。
72量
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長さ、質量、時間、電流、温度、物質量、光度、角度、立体角、面積、体積、角速度、角加速度、速さ、加速度、周波数、回転速度、波数、密度、力、力のモーメント、圧力、応力、粘度、動粘度、仕事、工率、質量流量、流量、熱量、熱伝導率、比熱容量、エントロピー、電気量、電界の強さ、電圧、起電力、静電容量、磁界の強さ、起磁力、磁束密度、磁束、インダクタンス、電気抵抗、電気のコンダクタンス、インピーダンス、電力、無効電力、皮相電力、電力量、無効電力量、皮相電力量、電磁波の減衰量、電磁波の電力密度、放射強度、光束、輝度、照度、音響パワー、音圧レベル、振動加速度レベル、濃度、中性子放出率、放射能、吸収線量、吸収線量率、カーマ、カーマ率、照射線量、照射線量率、線量当量、線量当量率 |
17量
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繊度、比重、引張強さ、圧縮強さ、硬さ、衝撃値、粒度、耐火度、力率、屈折度、湿度、粒子フルエンス、粒子フルエンス率、エネルギーフルエンス、エネルギーフルエンス率、放射能面密度、放射能濃度 |
物象の状態の量
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計量単位
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定 義
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長さ | メートル | 真空中で1秒間の299,792,458分の1の時間に光が進む行程の長さ |
質量 | キログラム | 国際キログラム原器の質量 |
時間 | 秒 | セシウム133の原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の9,192,631,770倍に等しい時間 |
電流 | アンペア | 真空中に1メートルの間隔で平行におかれた無限に小さい円形の断面を有する無限に長い2本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の1メートルにつき千万分の2ニュートンの力を及ぼし合う直流の電流又はこれで定義したアンペアで表した瞬間値の2乗の1周期平均の平方根が1である交流の電流 |
熱力学温度 | ケルビン | セルシウス度又は度 水の3重点の熱力学温度の273.16分の1(ケルビンで表される温度は熱力学温度とし、セルシウス度又は度で表される温度はセルシウス温度(ケルビンで表した熱力学温度の値から273.15を減じたもの)とする) |
物質量 | モル | 0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子または要素粒子の集合体(組成が明確にされたものに限る。)で構成された系の物質量 |
光度 | カンデラ | 放射強度683分の1ワット毎ステラジアンで540兆ヘルツの単光色を放射する光源のその放射の方向における光度(540兆ヘルツの単光色と異なる光については、通商産業省令で定める) |
2.適正な計量の実施
▽2-1 適正な計量
適正な計量を確保するために、取引又は証明における正確な計量を義務付け、計量証明事業者制度、自主的な計量管理の推進のための適正計量管理事業所制度、計量士制度などが計量法に規定されている。
ここで「取引」とは、「有償であると無償であるとを問わず、物又は役務の給付を目的とする業務上の行為」(法第2条第2項)をいい、例えば、牛肉100 gを500円で売買するなどの行為である。
また、「証明」とは、「公に又は業務上他人に一定の事実が真実である旨を表明すること」(法第2条第2項)をいい、例えば、宅地の登記や製品の品質性能証明などの行為である。
計量法では第10条第1項で、計量を行う者に対し、正確な計量に努める義務を定め、第10条第2項で、適正な計量を実施しない者に対し、都道府県知事又は特定市町村の長が是正する旨の勧告ができることを定めている。それでも従わない場合は第10条第3項で、都道府県知事又は特定市町村の長が適正な計量を実施しない者として公表できることを定めている。
これら一連の措置により、適正な計量を確保している。
▽2-2 特定計量器
「適正な計量の実施」のためには、上記のような適正な計量の確保することが必要であるが、その計量に用いる計量器も適正であることが求められる。こういった観点から、計量法では規制すべき計量器として「特定計量器」を定めている。この「特定計量器」は、以下の2つの要件から定めている。
1、取引又は証明における計量に使用される計量器のうち、適正な計量の実施を確保するためにその構造 又は器差に係る基準を定める必要があるもの。 2、主として一般消費者の生活の用に供される計量器のうち、適正な計量の実施を確保するためにその構造 又は器差に係る基準を定める必要があるもの。 |
このような要件から、大別して18種類の計量器が特定計量器として定められている。これら特定計量器は、性能検査及び器差検査を行う検定等の規制によって、計量器としての適正さ公平さが担保されている。
計量法では、正確な計量を義務付けること、また「特定計量器」として正確な計量器を供給することの2つから適正な計量の実施を確保を行っている。
3.計量法改正の3本柱
平成4年の計量法改正の3本柱は、計量単位のSI化、計量器規制の合理化、計量標準供給制度の発足である。
▽3-1 計量単位のSI化
取引又は証明に使用しなければならない法定計量単位について、非SI単位を段階的(猶予期間が3年、5年及び7年のもの)に計量単位から削除されることにより、原則として、1999年9月30日までにSI単位に統一しなければならない。
猶予期間が3年、5年の単位については、すでに法定計量単位から削除されている。残る7年の猶予期間の単位が最終の移行対象となっている。これらの単位は、産業界で多く使用されている重力単位系がほとんどであるため、その移行に時間を要するものであり、移行のための準備が必要となる。
最終の猶予期間も残り少なくなり、1997年に産業界での移行目標年を調査した結果では、1998年から1999年に実施する企業が多かった。駆け込み的移行が予想される。
しかしながら、SI単位への統一は、国際化の中で日本が果たさなければならない責務であり、世界全体で考えると大きな利益となる。
▽3-2 計量器の規制の合理化
計量器の製造、修理、販売事業の登録制を届出制にするとともに、計量器の検定について、一定水準の製造・品質管理能力を有する製造事業者の製品については、検定を免除する制度(指定製造事業者制度)を導入するなど、計量器に関する規制の一層の合理化が図られた。