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日本計量新報 2017年8月13日 (3160号)6面掲載

牧野富太郎博士の植物画

日本計量史学会副会長 大井みさほ

今年4月に江戸学懇話会で文京区にある根津神社などを回った際、同じ文京区にある森鴎外記念館のチラシをもらい、そのデザインに惹かれて6月に行ってみた。

鴎外記念館のその時期の展示テーマは「鴎外の庭に咲く草花‐牧野富太郎の植物画とともに」であったので、そういう植物が観られることを期待していったが、鴎外の庭自体は、現在はないに等しく、展示物に牧野富太郎の植物画が少し並べてある程度であった。

 それで改めて7月に大泉学園駅に近い牧野富太郎記念庭園に出かけた。庭園内には記念館があり牧野博士の描かれた植物画がたくさん展示されていた。

私は昔、こうした植物が大好きで、小学校高学年から中学校時代よく種を蒔いたり、さし木をしたりしていた。将来は造園家になりたいと思っていた。ところが高校3年の時は物理に進もうと思いたち、その結果大人になってからの職業が物理に関係深いものになった。

牧野富太郎記念庭園に入ると久しぶりに子ども時代の夢を想い出し、わが道を間違えたかとやや感傷的になった。庭園内にある記念館には博士の描かれた植物画や博士の使った絵筆などが展示されていた。

日本画用の絵筆が墨をたくさんためることができて使いよいそうだ。どうしてこう正確に描けるのであろうかとほとほと感心してみてまわった。私なら線はよれよれになるし、ペンや筆ではなく、鉛筆と消しゴムが必要で、修正がたくさん入るだろう。

牧野博士の出身地である高知県の県立牧野植物園にある博士の植物画もこの時期に並べてあった。

ところで「キバナノセッコク」という野生の蘭の絵があった。私が13年前に買い求めた「エピカト」という蘭にとてもよく似ている。「エピカト」はちょうど今家で咲いている。それと「キバナノセッコク」の絵を比べると、ちょっと目には花や葉の大きさが違うだけである。「エピカト」は「カトレア」を混ぜた改良種と聞いているが、ひょっとしたら元は「キバナノセッコク」でそれを変えていったのかもしれないと思った。寸法が気になったが植物画には書いていない。

 係の人に聞いてみると絵は実物大らしいが、係の人もよくわからないようである。そういえばどの植物画にも寸法は入っていない。植物図鑑では植物画の横に説明文がたくさんあり、寸法も書かれている。この展示にも寸法についての説明も入っていればよいのにと「なんでも測ってみようコンテスト」の審査委員である私はつい思ってしまった。

 後日いろいろ調べ出すと「セッコク」という植物は、属が和名ではラン、種が和名でセッコク、学名がDendrobium moniliformeである。 図鑑で見つけたのはどれも「セッコク」で、「キバナノセッコク」は見つからなかった。花の色は白である。

「エピカト」はエピデンドルム属(Epidendrum)とカトレア(cattleya) 属間の交雑によりつくられた園芸種である。うちにある「エピカト」は黄花である。博士の「キバナノセッコク」と、うちの「エピカト」は共に黄色の花で、大きさは違うが見た目がよく似ていて、語の「dendr」の部分に共通性が見られる。もう一度牧野記念館に行きたくなってきた。
(東京学芸大学名誉教授)


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