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2006年・関係機関の行動の基本〈産総研〉

検討が進む計量標準の拡充 

(独)産業技術総合研究所 計量標準管理センター長 中野英俊 


 新年あけましておめでとうございます。昨年は脱線事故や耐震強度偽造など、広い意味で社会システムの安全性や信頼性に厳しい目が向けられる事件が発生しました。脱線事故では、速度計の表示が間違っていたことも指摘され、事故原因や対策を含めて正確な計量計測の確保が安全な社会を構築する際の大前提であることが再確認されました。

 昨年の挨拶でも、安心安全な社会の実現に向けて、求められる計量標準への新たな期待と拡充の方向性について紹介させていただきましたが、この1年を振り返りますと、計量標準を取り巻く環境は予想したスピードよりも格段に速く動いてきた感があります。ここでは紙面を借りまして、最近の計量標準の動向について、産総研の第二期中期計画も含めてご報告いたします。

 産総研は、平成17年4月より5カ年計画で第二期の中期計画を開始しました。これに先立つ第一期においては、欧米先進国並みの計量標準を整備することが大きな課題であり、これまで大幅に遅れていた計量標準の供給体制をキャッチアップするフェイズにありました。関係者の皆様のご協力により、いくつかの分野においては概ね第二期末までに、欧米先進国と遜色のない国家計量標準の整備が期待できる見通しがついています。

 産総研の第二期中期計画では、これまでの第一期の計量標準整備の方針を踏襲して、円滑な国際通商や高度な生産管理に不可欠である基本的な計量標準の整備に努めるとともに、先端産業や社会の安心安全に向けた計量標準の整備に向けて、これまで以上に努めて参ります。このような産総研の長期的な研究計画について、計量計測分野を含めてバイオや情報等の6つの分野ごとに研究戦略が立案され、内外に示されているところです。

 一方、計量の世界全体に目を向けますと、国際的にも計量標準の拡充が至急の課題となっている分野が少なくありません。化学関連の標準につきましては、多くの国も分野の拡大に整備が追いつかないのが現状です。特に、臨床検査、食品、環境などについては、人々の安全意識の高まりや第三者認証を利用した試験検査体制の利用に当たり、計測結果のトレーサビリティの確保が、ますます重要になっています。このような動きと呼応して、国が計量制度について抜本的な見直しも視野に入れた検討を開始したことは、誠に時機を得たものと存じます。

 広がる計量標準の分野において、国際的に整合した標準供給の体制を産総研を含めた日本全体でどのように構築していくか、社会の至急のニーズに対して迅速に対応する供給体制はどのようにあるべきか、その仕組みづくりが真剣に議論されているところであります。産総研は計量標準の国際相互承認やメートル条約を通して、中核となる国家計量標準機関であり、産総研の持つコーディネーションの機能が国内外において、ますます重要になるものと考えております。

 また、我が国のものづくりを支える観点から、中小企業を含めた産業界全体に計量標準を普及させていく必要があると考えます。このため、国家計量標準の開発だけでなく、人材の育成や企業との共同研究、技術指導を通して、国家計量標準と校正の現場を結びつける活動を積極的に展開していきます。その一環として昨年度より計測標準クラブを分野ごとに立ち上げ、ユーザの皆様と一体となって計量標準の普及と利用促進に努めてていく所存であります。

 最後になりましたが、本年も皆様方の益々のご発展を祈念いたしまして、ご挨拶といたします。

(以上)

 
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